研究課題/領域番号 |
21K05163
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
福元 博基 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (70313369)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 透明性フッ素樹脂 / ペルフルオロアルケン / ラジカル重合 |
研究実績の概要 |
本研究では入手容易なフルオロアルケンの求核剤に対する反応性を巧みに利用した、低屈折率光学材料への応用展開を指向する透明フッ素樹脂の高効率合成プロセスを開発する。開発した透明フッ素樹脂の透明性、耐熱性、屈折率、撥水性なども併せて評価することで、低屈折率光学材料への応用可能性を明らかにする。具体的な原料のフルオロアルケンにはヘキサフルオロプロペン(HFP)、オクタフルオロシクロペンテン(OFCP)、またフルオロアルケンの前駆体としてヘプタフルオロシクロペンテン(HFCP)を用いることを予定している。 今年度はHFCPを原料とする含フッ素ポリアクリレートの合成を中心に行った。まず初めにHFCPに対して塩基を作用させることで鍵となるヘキサフルオロシクロペンテンを合成し、次いで過マンガン酸カリウムで酸化することで、2つのヒドロキシ基を有する環状フルオロアルカンを合成した。この前駆体の2つのヒドロキシ基に対し重合部位となるアクリレートユニット、メタクリレートを1つないし2つ導入することでモノマーを合成した。 次に合成したモノマー(4種類)のラジカル重合を無溶媒で行ったところ、いずれも有機溶媒に不溶なポリマーが得られた。固体13CNMR、IR測定により目的ポリマーであることを確認した。重合度の高いポリマーが得られたと判断したため、ポリマーの可溶化として溶液重合も検討したが重合は進行せず目的のポリマーは得られなかった。このままでは成形加工が困難であることから、ポリマーの可溶化を行うためHFCPに対してメタクリレートが1つ含まれるモノマーに可溶性置換基の導入を種々検討したところ、アセチル基が結合したモノマーについて対応するポリマーの可溶化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画では最初にヘキサフルオロプロペン(HFP)を基本骨格とする含フッ素透明樹脂を開発する予定であったが、ヘプタフルオロシクロペンテン(HFCP)を原料とする樹脂の開発の方がより早く進展することがわかったため、開発する順番を入れ替えた。結果的に研究全体の進捗状況に影響を及ぼすことがなかったため、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記合成した含フッ素ポリアクリレート、ポリメタクリレートの更なる可溶化に向けたモノマーの分子設計を行った上、再度ポリマーの合成を実施する。合成したポリマーの製膜化と特性評価(透過率、接触角など)を順次行う予定である。また、実施する順番を入れ替えたヘキサフルオロプロペン(HFP)を基本骨格とする含フッ素透明樹脂の開発も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナ禍の影響で研究中断期間があったことに加えて、学会等の参加に係る旅費も発生しなかったため、次年度使用額が生じた。物品購入が少なかったものの、予想以上に効率よく樹脂開発が行えたため研究進捗状況に大幅な支障が出なかったと考えている。今年度は引き続き目的樹脂の開発に加えて樹脂の特性評価も精力的に行うため、合成用試薬ならびに反応容器、各種測定に係る消耗品購入に充てる。また、学会がオンサイトで実施された場合の参加に係る旅費にも使用する。
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