研究課題
近年,紙や看板に代わる広告媒体としてフレキシブルディスプレイに注目が集まっており,フレキシブル化を実現する液晶材料の開発が期待されている。我々はroll-to-roll印刷プロセスを可能にする液晶ナノカプセルの作製を検討した。本研究では,開始剤としてmethyl methacrylate(MMA)の分散重合により合成したマイクロメートルスケールのPMMAシード粒子と液晶分子(4-cyano-4’-pentylbiphenyl(5CB))とをmethanol中で撹拌しながら,水を滴下することにより,シード粒子内部に液晶が導入された真球状の液晶カプセルを作製した。熱重量分析(TGA)を用いたカプセル内部の液晶含有率測定より,5CB濃度の増加ともに液晶含有率が増大することがわかった。また,高温側の等方相よりも低温側のネマチック相の方が液晶含有率が高い結果となった。これは,流動性の高い等方相では混合溶媒へ5CBが溶けやすく,溶媒へ5CBが溶け残ってしまったこと,等方相での撹拌ではシード粒子内部で液晶相を形成せず,カプセル化された液晶が漏出したことなどが原因として考えられる。次に,1 wt%のPVP-K30水溶液に,1 wt%の液晶カプセルを分散させてマグネチックスターラーを用いて撹拌することにより,異方化された円盤状液晶カプセルを得た。真球状および円盤状液晶カプセルをITO電極付き両面セルに注入し,液晶セルを作製した。液晶セルに電圧を印加し,偏光顕微鏡観察を行ったところ,0 V/μmでは双方とも周囲の視野との差異が確認されなかった一方で,10 V/μmの印加電圧で円盤状液晶カプセルのみ暗視野となったことから,カプセルの異方化により電場応答性が獲得されたことを確認した。
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Polymer
巻: 208 ページ: 126846
10.1016/j.polymer.2024.126846