研究課題/領域番号 |
21K05167
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
脇岡 正幸 京都大学, 化学研究所, 助教 (50598844)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | π共役ポリマー / 高分子合成 / 触媒化学 |
研究実績の概要 |
π共役ポリマーの電荷輸送特性は一次構造に強く依存するにも関わらず、一次構造を大きく変える構造欠陥(ホモカップリング欠陥)の影響は、ほとんど考慮されてこなかった。本研究では、ホモカップリング欠陥が電荷輸送特性に及ぼす影響と、一次構造と電荷輸送特性の真の相関を明らかにすることを目的に検討を進めている。初年度は、(1)高い電荷輸送特性を示す既知のポリマーのうち、ホモカップリング欠陥を多く含むものの選定とその合成、(2)(1)で選定したポリマーを構造制御合成する手法、(3)構造制御合成を可能とする新たな高選択的重合触媒の開発について検討した。 (1)重合のモデル反応(1対1のクロスカップリング反応)を行うことにより、2-ブロモチオフェン-5-イル基をもつ基質がホモカップリングを発生させやすいことを明らかにした。これは恐らく、触媒中間体であるチエニルパラジウム錯体が不安定で不均化を起こしやすいためと推定された。その知見に基づいてポリマーを選定し、文献通りに合成したところ、得られたポリマーには36%ものホモカップリング欠陥が含まれていることが明らかとなった。 (2)(1)で選定したポリマーについて、重合条件を精査した結果、ホモカップリング欠陥をほとんど含まない(<2%)ポリマーが得られた。 (3)(2)の検討過程において、高活性かつ高選択的な直接的アリール化触媒の開発に成功した。すなわち、2種類のホスフィン配位子を同時に用いることにより、反応性が低く直接的アリール化への適用が困難であった塩化アリールについても、反応が高効率に進行することを見出した。また、この触媒を用いることにより、安価なp-ジクロロベンゼンから高い電荷輸送特性を示すことが知られるπ共役ポリマーを高精度で合成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の検討により、高い電荷輸送特性を示す既知のπ共役ポリマーのうち、ホモカップリング欠陥を多く含むものを明らかにするとともに、そのポリマーの構造制御合成法を確立した。また、π共役ポリマーの構造制御合成を可能とする新たな高選択的重合触媒の開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の検討により得られたπ共役ポリマーについて、基本特性[HOMO・LUMOのエネルギー準位(UV-vis, PYS, CV)]、電荷輸送特性を左右する薄膜構造[均質性(AFM)、結晶性(XRD)、配向性(IR-pMAIRS等)]、電荷移動度(SCLC, OFET等)]を調べる。ホモカップリング欠陥を含むポリマーと、構造制御されたポリマーの特性を比較することにより、欠陥が特性に及ぼす影響を調べる。また、構造制御された複数のポリマーについて、それらの基本特性を比較することにより、一次構造と電荷輸送特性の真の相関を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、元々所有していた試薬類・消耗品類を使用して遂行できたため、当初の予定より使用額が小さくなった。次年度は、当初予定していたよりも高額な試薬類・消耗品類を使用する必要が生じたため、初年度に使用しなかった助成金をそれらの購入に充てる。
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