研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,キラルジアミンとビスカルボジイミドの付加反応に基づくグアニジン集積法を活用し,グアニジン型不斉触媒としての機能発現を志向して設計した様々な光学活性グアニジン集積体の合成法を確立すること,また,それらの不斉触媒としての有用性・実用性を見出すことである。具体的には,原料の設計によって生成物の構造,立体配座,物性を制御することを基本戦略とし,高い不斉誘起能を指向した分子設計として(i)嵩高い側鎖置換基,(ii)らせん構造,(iii)ハイパーブランチ構造,(iv)多様なジアミン由来骨格を有する光学活性グアニジン集積体の合成と機能評価,さらに(v)原料の非等モル混合に基づく段階的鎖伸長を活用した鎖長制御と不斉触媒作用における鎖長依存性の解明に向け実施計画を立てた。 初年度はおもに上記(i)と(v)について検討を進めた。(i)では,嵩高い側鎖置換基として1-, 2-, および9-アントラセニル基に着目し,対応するビスカルボジイミドの合成法を確立した。また,それらと光学活性なtrans-4a, 8a-デカヒドロキノキサリンの重付加反応による光学活性グアニジン集積体の合成法を確立した。さらに,それらが不斉塩基触媒として機能することを明らかにし,これらの成果を側鎖置換基の影響に関する新たな知見として国内研究会で発表した。一方,各種分光分析,クロマトグラフィー,計算科学の手法を活用することで,成長鎖の会合を鍵とする当重付加反応の重合機構および触媒作用の鎖長依存性を明らかにし,これらの成果を(v)に関連する知見として国際誌論文(ACS Omega 2021, 6, 33215)で発表した。また,当研究から着想を得た低分子キラルグアニジン触媒を別途開発し,その成果を国内学会および国際誌論文(Bull. Chem. Soc. Jpn. 2022, 95, 553)で発表した。
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