研究実績の概要 |
末端構造を持たない環状高分子は,多くのユニークな物性を示し興味が持たれる。一方,共役系高分子は,分子軌道の縮退による特異な導電性,電荷分離,光吸収および発光性から光・電子材料として注目を集めている。以上を合わせ持つ「環状共役高分子」は,環状構造による物性変化のみならずπ-π相互作用を含むHost-Guest化学や自己組織化にも興味が持たれる。我々は,1,6-ジインのNi触媒反応の検討中に,環状ポリエンの副生を発見した。この環状ポリエンは,狭い分子量分散で得られ,分析結果および予想反応機構からall-cisの環状ポリエン構造であると考えられた。 本研究では,嵩高いN,N-またはN,N,N-型配位子を有するニッケル錯体が,制御された方法で1,6-ジインの選択的付加環化オリゴマー化を触媒し,狭い分子量分散を有する中サイズの環状ポリエンを提供することを確立した。 本法は,幅広い官能基選択性を持ち,再現性に優れている。得られた環状オリゴマーは熱的に異性化され,トランス二置換アルケンを含む位置異性環状ポリエンになる。 異性化された環状ポリエンは、異性化前には観察されなかった共役構造を示す。 オリゴマー化で達成される狭い分子量分散を含む本反応の反応機構を提示した。 本研究によって,少量のNi触媒によって,1,6-ジインからおよそ8量体を中心とする環状ポリエンオリゴマーが選択性,収率,再現性よく得られることが明らかになった。さらに,幅広い官能基に選択性があり,様々な官能基を有する環状ポリエンオリゴマーが合成できることを明らかにした。この環状ポリエンオリゴマーのポリエン部分はall-cis体であり,立体的に折り畳まり縮退した構造を持っており,共役していないこと,さらに,熱処理によって位置及び幾何配置が異性化し,環状に広がった高分子に変化することを明らかにした。
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