研究実績の概要 |
天然由来のクロロフィル(Chl)誘導体を、ポリ(4-ビニルピリジン)(P4VP)に共有結合を介して導入することを試みた。 P4VPへのChl誘導体の導入には、以前に我々が報告したBarluenga試薬によるChl誘導体の3-ビニル基へのピリジン類の酸化的付加反応を利用した。この反応によって、3-ビニル基のクロリン環に近い側の炭素とピリジン中の窒素との間にC-N+結合が形成され、カチオン性のChl誘導体が得られることが確認されている。 まず、市販品である平均分子量が約64,000のP4VPとChl誘導体の反応について検討を行った。その結果、ピリジン部位の数に対して0.5, 1.3, 2.5%の量のChl誘導体を反応系に添加した際、それぞれピリジン部位の数に対して0.2, 0.7, 1.3%のChl誘導体が付加したことがGPCと紫外可視吸収スペクトルから示された。この時の紫外可視吸収スペクトルにおける極大吸収波長は、上記の反応においてモノメリックなピリジンにChl誘導体を反応させて得られたカチオン性Chl誘導体と一致しており、C-N+結合の形成が示された。 また、平均分子量10,000程度のP4VPを合成し、同様の手法でChl誘導体を導入したところ、ピリジン部位に対して最大15%のChl誘導体を導入することに成功した。 こうした一連のカチオン性Chl誘導体が結合したP4VPの蛍光量子収率測定を行ったところ、P4VP中のカチオン性Chl誘導体の量が多いものの方が量子収率が低下する傾向にあることが示された。 また、上記とは別に、ビニルピリジンとエチレングリコールジメタクリレートを用いて重合誘起相分離法で比表面積が約500 m2 g-1の多孔質ポリマーを調製し、その表面にも同様の手法でカチオン性Chl誘導体が固定化できることを確認した。
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