研究課題/領域番号 |
21K05174
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
須藤 篤 近畿大学, 理工学部, 教授 (20293053)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 可視光 / 還元的カップリング / イミン / 重付加 / 高耐熱性高分子 |
研究実績の概要 |
本研究の最終的な目標は「可視光利用にもとづく高耐熱性高分子の開発」であり、その実現のための手段として、これまで申請者が開発したイミン類の可視光駆動型の還元的カップリング系に着目した。この系は、光レドックス触媒としてペリレンを用いたメタルフリーな反応系であり、申請者が独自に開発したものである。 研究は3つのサブテーマからなり、サブテーマ1では還元的カップリング系をジイミンの反応に適用することでポリアミンを合成すること、サブテーマ2では得られたポリアミンの物性を評価すること、サブテーマ3ではポリアミンの化学修飾による耐熱性向上を検討する。 本年度は、主にサブテーマ1についての検討を進めた。置換基を系統的に変化させたジイミンをモノマーとして用意し、それらの還元的カップリングを行った。その結果、いくつかのジイミンについては重付加が進行し、対応するポリアミンが得られた。特に、イミンの炭素-窒素二重結合と共役する芳香環に電子求引性の置換基がある場合、重合が円滑に進行し、数平均分子量が1万を超える高分子が得られることが明らかになった。 また、サブテーマ2についても、当初計画のとおり今年度後半からスタートした。得られたポリアミンの示差走査熱量測定を行ったところ、ガラス転移温度が110~160 ℃と比較的高いことが明らかになった。すなわち、まずは予備的知見ながらも、可視光を利用する反応によって高耐熱性高分子が得られる可能性を実証することができた。 なお、トリイミンの還元的カップリングを実施したところ、溶媒不溶の三次元架橋高分子(ネットワークポリマー)が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、サブテーマ1の目標、すなわち可視光駆動型の還元的カップリングを利用することで高分子を合成する、をおおむね達成することができた。よって、おおむね順調に進展している、と判断した。 検討に用いたジイミン型モノマーは5種類であり、それらは共通の中心骨格をもちつつ、イミノ基と共役した芳香環上の置換基が異なるものであり、電子供与性・求引性を系統的に変化させたものである。これによって、ジイミンの還元的カップリングによる重合効率に与える置換基の電子的な影響を明らかにすることができた。なお、電子供与性をもつジイミンの場合には重合効率が低いが、この改善については次年度も継続されるサブテーマ1の中で検討する予定である。 また、サブテーマ2においても、サブテーマ1で得られたポリアミンのガラス転移温度が比較的高いことが明らかになり、可視光駆動型の反応によって高耐熱性高分子を合成するという本研究の方向性が妥当であることを確認することができた。このことも評価理由の1つである。
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今後の研究の推進方策 |
まずサブテーマ1において、電子供与性置換基をもつジイミンの重合効率向上を目指す。当初計画のとおり、光レドックス触媒であるペリレンに基質捕捉能力をもたせる手法を検討するほか、ジイミンの活性化のための添加剤(ブレンステッド酸やルイス酸)の探索を進める。 また、サブテーマ1では、ジイミンに対してアダマンタンなどの剛直な骨格を導入することで、得られるポリアミンのガラス転移温度の向上を図る。これをサブテーマ2と連携しつつ進捗させる。 令和4年度からはサブテーマ3、すなわちポリイミンの化学修飾による耐熱性向上、を開始する。得られるポリイミンは繰り返し単位中に1,2-ジアミン構造をもつことから、これを環状N,N-アセタールや環状ウレアへと誘導することで、さらなる耐熱性向上を図る。これらの反応には、天然物由来のアルデヒドや、ホスゲンフリー法で製造されたジフェニルカーボナートなどの低環境負荷型の反応剤を利用する。
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