有機ナノ結晶では結晶格子のソフト化によって、結晶格子歪みの蓄積/解消挙動がバルク結晶とは異なる。そこで、紫外線照射を切っ掛けとした固相重合性を示すジアセチレン誘導体を対象にナノ結晶およびナノ結晶ファイバーについて結晶構造相転移型固相重合ダイナミクスの結晶サイズ依存性を調べた結果、いずれの場合もシグモイド関数で良好にフィッティングでき、ナノ結晶ファイバーではモノマーナノ結晶ファイバーからポリマーナノ結晶ファイバーへのより急激な結晶 構造相転移と短い重合時間を示した。また、ナノ結晶ファイバーの励起子吸収ピーク波長はナノ結晶のそれより長波長シフトしており、結晶内の残留歪みが少ない結晶が創出したことを意味する。そこで、生成したポリジアセチレンナノ結晶ファイバーを光触媒とした可視光応答型水素発生実験を試みた。実際には、ポリジアセチレンナノ結晶ファイバー水分散液に助触媒(白金ナノ粒子)の前駆体として塩化白金酸カリウムと正孔犠牲剤としてメタノールを添加し、500 Wキセノンランプを照射して水素発生量の経時変化をモニターした。また、白金ナノ粒子がナノ結晶表面に吸着しやすい効果があることが分かっている界面活性剤SDSを加えた。実験開始直後には明確な水素発生を確認できなかったが、数十分経過後から水素ガスが発生し始めた。これはナノ結晶ファイバー上で白金錯イオンが還元され、白金ナノ粒子がナノ結晶ファイバー上に析出するまでに時間を要するためと考えられる。一方で、対応するナノ結晶では水素発生量が著しく少なかった。水素発生実験後のナノ結晶ファイバーとナノ結晶をTEM観察し、白金ナノ粒子の吸着量を比較したが、吸着量の差の影響を考慮しても水素発生量には有意差があり、光学特性や結晶化度の違いを反映した結果と考えられる。
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