研究課題/領域番号 |
21K05182
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
澤田 敏樹 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (20581078)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生体高分子 / タンパク質 / 自己集合 / 熱伝導 / 熱拡散率 |
研究実績の概要 |
様々な電気・電子機器やデバイスにとって、許容限度温度以上への上昇を抑える放熱は近年益々重要な技術課題となっている。本研究では、熱界面材料としての有機系高分子に着目し、天然由来のタンパク質を素材とした集合体の熱伝導性を評価し、その高熱伝導化を図るとともにその機構を理解することを目指した。 シルクタンパク質に着目し、様々な由来のカイコの繭糸の熱拡散率を温度波熱分析法により評価した。その結果、由来によって熱拡散率の値は異なっており、タンパク質のアミノ酸配列や二次構造といった違いが熱伝導性に確かに寄与することがわかった。さらに、シルクフィブロインを抽出して溶解させ、様々な条件下で集合化させてフィルム調製した。フィルムを延伸配向させるため有機溶媒に浸漬させた結果フィルムはやや膨潤する様子が観察され、赤外吸収スペクトル測定から二次構造が変化しており、βシート構造リッチになることがわかった。また、浸漬させたフィルムを10%から30%まで延伸した結果、二次構造に大きな変化は見られないまま延伸されることがわかった。それらの熱拡散率を測定した結果、調製直後のフィルムの厚さ方向の熱拡散率は5×10-8 m2 s-1程度であったが、有機溶媒への浸漬によってその値は3倍近く上昇した。その一方で延伸させた際には、延伸に応じて熱拡散率は低下し、30%延伸させた際にはオリジナルのフィルムと同定度であった。これは、延伸によってタンパク質は確かに配向するものの、厚さ方向の分子間相互作用がより弱くなったためと考えられる。 またリゾチーム結晶を調製し、様々な結晶形をもつ結晶の熱拡散率を測定した。ここでは、マイクロ温度波熱分析法を利用して測定しており、タンパク質結晶の熱拡散率は結晶形や測定方向によって異なる可能性を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シルクタンパク質とリゾチームの集合構造の制御が熱伝導性の制御に有用であることを見いだした。アミノ酸配列や二次構造、また結晶構造といった階層の異なる構造それぞれが寄与していることが明らかとなり、今後の熱伝導性制御の設計指針となるものと期待される
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質が示す規則構造のさらなる構造制御とそれらが熱伝導性に与える効果を明らかにすることを目指す。二次構造や配向構造に加え、アミノ酸間の架橋や架橋剤の利用などにより、それらが与える効果を明らかにする。また、タンパク質結晶の測定では、よりサイズの小さなタンパク質結晶の測定やまた化学架橋の導入なども検討し、それらが熱輸送に与える効果を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
シルクタンパク質の構造制御が想定より速く進んだため、条件検討に必要と思われた生化学試薬の使用が予定より少なくなった。次年度は、化学架橋などの化学試薬も利用した熱伝導性の制御に取りくむ。
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