研究課題/領域番号 |
21K05185
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
足立 馨 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (40401533)
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研究分担者 |
岩村 武 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (10416208)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アニオン重合 / マクロイニシエーター / 末端官能基化 / 表面修飾 |
研究実績の概要 |
本研究は、枝鎖末端に反応性官能基を有するアルボレッセントポリマーの合成法の確立と、基板へのアルボレッセントポリマー固定化技術の確立、アルボレッセントポリマー固定表面の特性解析を行うもので、2022年度は、これまでに確立している多官能アニオン性マクロイニシエーターからのアニオングラフト重合と続く停止剤による末端官能基化により合成したた多分岐高分子を、共有結合にて基板表面に固定化する技術の開発を行った。固定化する基板には表面が平滑なシリコンを用い、シランカップリング剤を用いて表面修飾を行った。ポリマーの表面固定化は、AFMを用いて表面修飾前後の表面形状を観察することで確認した。多官能アニオン性マクロイニシエーターからのアニオングラフト重合の停止反応により各種官能基を検討したところ、ジメチルシリル基を末端に導入したポリマーと、ビニルシラン修飾シリコン基板表面との間のヒドロシリル化反応を用いて、基板表面にポリマーが固定化できることが明らかになった。直鎖高分子および多分岐高分子を固定化したシリコン基板表面の形状を観察したところ、シランカップリング処理した基板はナノレベルで平滑であったのに対して、直鎖高分子を固定化した表面および多分岐高分子を固定化した表面では、ポリマーの固定化に伴う表面凹凸が観察された。またこの凹凸は多分岐高分子を固定化した表面の方が大きく、高分子の一次構造を反映していることがわかった。この結果より、アルボレッセントポリマーの基板固定化法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は枝鎖末端に反応性官能基を有するアルボレッセントポリマーの合成法の確立と、基板へのアルボレッセントポリマー固定化技術の確立、アルボレッセントポリマー固定表面の特性解析を行い、高分子の構造と表面特性との関係を明らかにすることを目的としている。本研究の研究期間は3年を予定しているため、本研究を3つのステップに区分すると、①アルボレッセントポリマーの合成法の確立、②アルボレッセントポリマー固定化技術の確立、③アルボレッセントポリマー固定表面の特性解析となる。現在のところ区分①および②のアルボレッセントポリマーの枝鎖末端への反応性官能基導入法と、アルボレッセントポリマーの基板固定化法を確立していることから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した枝鎖末端に反応性官能基を有するアルボレッセントポリマーの合成法とアルボレッセントポリマーの基板への固定化技術を用いて、2023年度は、アルボレッセントポリマーを固定化した基板表面の特性を明らかにすることを目指して研究を遂行する。具体的には、各種有機溶媒を用いた接触角測定および材料表面のAFM観察やエリプソメトリーにより基板表面を解析し、高分子の一次構造と基板表面特性についての関係を明らかにする。また、枝鎖長の異なる各種アルボレッセントポリマーを合成し、高分子固定化表面における枝鎖の影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ポータブル摩擦計の購入を予定していたが、本年度は表面修飾技術の確立に注力したため、ポータブル摩擦計の購入を延期した。また予定していた学会がオンライン開催になった上、共同研究打合せをオンラインで行ったため、旅費に残額が発生し、次年度使用額が生じた。
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