研究実績の概要 |
熱硬化性樹脂は物性に優れた樹脂硬化物を与えることから幅広く利用されているが、安定な3次元網目状の分子構造を形成するため分解性に乏しく廃棄時には問題となる。また、多くは石油由来原料から合成されるため資源枯渇やCO2排出量増大なども問題となる。1分子に複数の5員環カーボナート基を持つカーボナート樹脂はエポキシ基にCO2を吸収させることで合成でき、ジアミン類硬化剤との反応によりヒドロキシウレタン系の硬化物となるが、さらに高温に加熱すると逆反応が進行して容易に分解可能である。また、酵素分解性を持つこ可能性もあり、環境調和型の樹脂として期待される。今年度は、生物由来のレスベラトロール、チラミン、クエン酸から合成した5員環カーボナート樹脂をジアミン硬化剤TODA(4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン)を用いて硬化して得られた硬化物の接着性および酵素分解性を検討した。その結果、レスベラトロール、チラミン硬化物はステンレス等の金属材料に対して良好な接着性を示すことがわかった。また、これらの硬化物が、プロテーゼやリパーゼなどの酵素溶液によって分解可能であることが示された。 研究期間全体を通して本研究では、生物由来物質、レスベラトロール、チラミン、クエン酸と二酸化炭素を利用して新規なバイオベース5員環カーボナート樹脂を合成する方法を確立し、これらのカーボナート樹脂がジアミン硬化剤を用いて加熱することで、樹脂硬化物となることを見出した。さらに、これらの硬化物の物性検討を行った結果、金属材料に対して良好な接着性を示すとともに、リパーゼやプロテーゼなどの酵素溶液で分解可能であり、環境調和型の熱硬化性樹脂として有用であることが示された。
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