研究課題/領域番号 |
21K05194
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
塚田 学 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (60632578)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セレノフェン / ポリセレノフェン / 金属調光沢膜 / インク / 塗布膜 |
研究実績の概要 |
本研究は、既存の金属フレークを含有する金属調光沢塗料の光沢に匹敵する有機分子のみで構成された高光沢有機高分子金属調光沢膜の開発を行う。この研究を通して、非金属化合物のみからなる金属調光沢膜において、強い光沢を出すにはどうすればよいか?立体規則性と反射率にはどのような関係性があるのか?という2つの問いを解明する。具体的には、セレノフェン誘導体を用いて、アニオンドープしたポリセレノフェンの合成、塗布膜の調製と膜物性の測定を行う予定である。 本年度は、3-アルコキシセレノフェンの合成及びアニオンドープしたポリセレノフェンの合成について検討を行った。セレノフェンを出発原料とし、2段階の合成ステップによる3-ブロモセレノフェンの合成、つづいてブロモ基をアルコキシ基へ変換することで、3-アルコキシセレノフェンを合成することに成功した。反応条件を検討することで、再現性良く中程度の収率で3-アルコキシセレノフェンが得られる条件を見出した。アルコキシ基への変換の際に用いるアルコールを変えることで、対応するアルコキシ基をセレノフェン上に導入することが可能であった。 次に、3-メトキシセレノフェンを過塩素酸鉄で酸化重合することで、過塩素酸イオンがドープされたオリゴ3-メトキシセレノフェンを合成した。得られたオリゴマーの塗布液を作製しガラス基板上へ塗布したところ、銅色に近い光沢膜が得られた。正反射率の測定結果から、同族類縁体であるオリゴ3-メトキシチオフェンに比べ反射波長が長波長シフトしており、また反射率も高くなっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画の通り、3-アルコキシセレノフェンおよびそのオリゴマーの合成手法を確立できた。チオフェン誘導体に比べて合成例の少ないセレノフェンにおいて再現性のある合成手法を見いだせたのは、重要な成果である。また、予備的な検討ではあるが、塗布膜の調製に成功し、その塗布膜が銅色に近い光沢を発現することを見出せた。 以上のことから、本申請課題はおおむね順調に進展している、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画の通り、光沢膜の調製方法・条件を確立する。得られた塗布膜の物性測定を行い、その膜特性を明らかにする。具体的には、膜厚測定、正反射率測定、測色、エリプソメトリー測定、電気伝導度測定などを行う予定である。 また、種々のアルコキシ基をセレノフェン上に導入できることがわかったので、メトキシ基とは異なるアルコキシ基を有する3-アルコキシセレノフェンを用いてオリゴマーおよび塗布膜を調製し、置換基が膜物性に与える影響について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、これまでに保管していた試薬類で合成実験の一部が行えたために、次年度使用額が生じた。これは次年度に試薬購入費や実験器具購入費にあてることで、研究の加速を目指す。
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