研究課題/領域番号 |
21K05196
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
中根 幸治 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (50292446)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エレクトロスピニング / ナノ繊維 |
研究実績の概要 |
有機相一相のみでの液中エレクトロスピニング(ES)における有機相(凝固液)の有機溶媒の種類について検討を行った.まず,低誘電率のヘキサン,トルエン,ドデカン,イソパラフィンソルベントを凝固液,また,ポリビニルアルコール(PVA)-ジメチルスルホキシド(DMSO)または酢酸セルロース(CA)-ジメチルホルムアミド(DMF)を紡糸液として液中ESを行った.PVA-DMSO溶液,CA-DMF溶液どちらの場合もヘキサン中での紡糸が最も細くて繊維同士の密着の無いナノ繊維(不織布)が得られることがわかった.これは紡糸過程で紡糸液の溶媒をヘキサンが最も効率的に吸収するためと考えられる.相対的に高い誘電率のアセトンやアルコールを15%までヘキサンに添加し,ナノ繊維形成への影響を調べたがヘキサンに添加しない方(凝固液の誘電率が低い方)がナノ繊維が良好に得られた(エタノール10%またはアセトン15%添加するとナノ繊維は得られなかった).上述の理由から,有機相/水相の二相分離系の検討については有機相としてヘキサンを使用することに決定した.また,有機相一相のみにおいて,コレクター間距離が近いほど得られたナノ繊維の平均繊維径が小さくなることがわかった.これは空気中に紡糸する一般の溶液型ESと反対の傾向である.同様に,二相の液中ESにおいても針先と二相界面の間の距離が小さい方が平均繊維径が細くなった.動画撮影では紡糸中のテーラーコーンは観察されたがポリマージェットを観察するには至らなかった.しかしながら,コレクター間距離が近いほど繊維は細くなる傾向であったことから通常のwhippingは起こりにくく,電位差の大きな勾配によりポリマージェットは強く牽引され細繊化することが考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の第一の目的は,有機相と水相の二相分離系での液中ES法のナノ繊維形成について系統的に調べることである.誘電率の異なる凝固液を用いた結果,本研究ではヘキサンが最も有用であることを確認した.またヘキサン中に液中ESを行うことにより,PVAとCAを用いて良好なナノ繊維が形成できることを示した.ただし,PVAを用いる二相での液中ESでは界面でPVAが水に溶解してしまうため繊維形状が保てなかった.そこで二相分離系での液中ES法についてはCAを用いて検討を行った.得られるCAナノ繊維の平均繊維径はノズルと二相界面の距離を変化させることによりある程度(150~300 nm程度の範囲内で)変化させることができた.紡糸過程のカメラ撮影によるポリマージェットの観察には成功していないが,テーラーコーンは確認でき,また,紡糸中のwhippingはあまり起こっていないことが考えられた.以上のことから本研究で必要とされる液中ESについての知見は概ね得られたと判断できるため本研究は概ね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,有機相と水相の二相分離系での液中ES法の利点を示すために,有機相と水相の界面を利用した上面と下面で表面特性がそれぞれ異なるナノ繊維不織布が作製できることを明らかにする. まずは,有機相あるは水相に機能性化合物を溶解または分散させ,反応を伴った液中ESによる機能性複合ナノ繊維不織布が作製できることを明らかにする.これまでに一相の液中ESにおいて,ヘキサン中に遷移金属アルコキシドを溶解させてESを行うと遷移金属化合物を含有したナノ繊維が得られることを確認している.今後の研究で二相分離系での液中ES法の紡糸過程での反応を制御し上面と下面で組成が異なる有機-無機ハイブリッドナノ繊維の創製を行う. また,親水性部分と疎水性部分の両方を分子鎖に有する共重合体(ブロック,グラフト)を用い二相分離系で液中ESを行う,これにより,有機相と水相の界面を利用した上面と下面で表面特性がそれぞれ疎水性部分(上面),親水性部分(下面)の組成が異なる高分子ナノ繊維不織布が作製できることを明らかにする.ブロック共重合体としては,市販品のエチレン-ビニルアルコール共重合体,ポリ乳酸-ポリエチレンオキシド共重合体,ポリメタクリレート-ポリエチレンオキシド共重合体,グラフト共重合体としては,ポリ乳酸グラフト化多糖類を用いる予定である.それぞれ疎水部と親水部のバランスが異なる複数のグレードの試料を用いて検討を行う.さらに,紡糸液として複数の高分子の混合溶液を用い,紡糸中の高分子ブレンド系の相分離過程を利用して同様に上面と下面で組成の異なる不織布作製の可否を明らかにする.
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