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2022 年度 実施状況報告書

強酸性官能基を有した架橋ポリマーからなる無水高分子電解質膜の創製

研究課題

研究課題/領域番号 21K05197
研究機関名古屋大学

研究代表者

野呂 篤史  名古屋大学, 工学研究科, 講師 (90377896)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード脱保護 / ポリスチレンスルホン酸 / 架橋 / イオン交換容量 / 燃料電池 / 電解質膜 / 伝導率 / スルホン酸エステル
研究実績の概要

2021年度において、脱保護法を利用することでスルホン酸含有率の高いポリスチレンスルホン酸架橋物(CL-sSA)を合成していた。膜調製、伝導率測定の再現性に十分に注意をし、調製、測定を進めた。なお、膜のイオン交換容量(IEC)は滴定により決定し、5.0 mequiv/g以上であることを確認した。このCL-sSA膜の80℃、90%RHでの伝導率は0.93 S/cmであった。一般的に燃料電池用電解質膜として利用されるChemours のNR212(ナフィオン)の伝導率は0.15 S/cmであるため、CL-sSA膜は同条件で極めて高い高伝導率を示すことが分かった。化学架橋のために用いられるジビニルベンゼンを混ぜ込まずに、アルキル保護基で保護したスルホン酸エステルモノマー(スチレンスルホン酸n-ブチル)のみを重合させ、さらに脱保護することで得られる未架橋のポリスチレンスルホン酸は、加湿下では水分によって溶解するため膜としての形状を維持できず、CL-sSAでは化学架橋の有効性を見出すことができた。これらの成果をまとめてACS Applied Polymer Materials誌に論文を投稿し、受理がなされた。プレスリリース(科研費への謝辞記載)を発表したところ、国内外で大きな反響があり、日経電子版、日経産業新聞9面などで関連記事が取り上げられた。
さらに、酸性官能基を有する架橋ポリマーにリン酸を浸み込ませた電解質膜も作製、無加湿下で伝導率を測定し、学会発表も行った。
そのほか、酸性官能基を有する架橋ポリマーの合成、評価実験と並行して、塩基性官能基を有するポリマーに強酸性液体を浸み込ませて得られる電解質膜の作製及び評価、イオン性のポリマーの調製及び力学特性に関しても一部実験を実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2022年度末までの目標としていた、スルホン酸エステルを有したモノマーを合成して重合・架橋することで、保護されたスルホン酸基を有する架橋ポリマーを合成し、さらに塩基性条件下で脱保護反応を行うことでスルホン酸基(強酸性官能基)を高密度で有する架橋ポリマーを合成しており、また得られた架橋ポリマーからなる電解質膜を作製し、伝導率測定を行って高伝導率を確認し、論文発表も行うことができたため。

今後の研究の推進方策

強酸性官能基であるスルホン酸基を高密度で有する架橋ポリマーの合成法の有効性が、英語論文の受理、国内外メディアでの大きな反響からも認められた。今後はこの合成法の有効性を学会でも発表する(2023年9月の高分子討論会で発表を計画)。さらに、この手法を用いてスルホン酸基を高密度で有する架橋ポリマー膜中のスルホン酸基の密度、架橋点密度を適宜調節することでスルホン酸基を高密度で有する架橋ポリマー膜が示す伝導率がどのようになるのかを確認する。またスルホン酸基を高密度で有する架橋ポリマー膜の伝導率の湿度依存性についても調査し、無機酸等添加物の影響などについても調査する。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍が続いたことで、出張の機会が少なく、旅費がかからなかったこともあり、次年度使用が生じた。
研究が進展しており、コロナ禍の収束に伴い出張も増えるため、次年度では物品購入費、旅費、人件費等が増える使用計画を予定している。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Effects of a Nanophase-Separated Structure on Mechanical Properties and Proton Conductivity of Acid-Infiltrated Block Polymer Electrolyte Membranes under Non-Humidification2023

    • 著者名/発表者名
      Kajita Takato、Tanaka Haruka、Ohtsuka Yumiko、Orido Tsuyoshi、Takano Atsushi、Iwamoto Hiroyuki、Mufundirwa Albert、Imai Hideto、Noro Atsushi
    • 雑誌名

      ACS Omega

      巻: 8 ページ: 1121~1130

    • DOI

      10.1021/acsomega.2c06514

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Synthesis of a Cross-Linked Polymer Electrolyte Membrane with an Ultra-High Density of Sulfonic Acid Groups2023

    • 著者名/発表者名
      Sato Katsumi、Kajita Takato、Noro Atsushi
    • 雑誌名

      ACS Applied Polymer Materials

      巻: 5 ページ: 3480~3488

    • DOI

      10.1021/acsapm.3c00150

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 架橋したポリアクリル酸架橋物と無機酸からなる無水系電解質膜の調製2022

    • 著者名/発表者名
      中山孟紀、佐藤克海、梶田貴都、野呂篤史
    • 学会等名
      2022年電気化学会 東北支部・東海支部合同シンポジウム
  • [学会発表] ポリアクリル酸架橋物とリン酸からなる無水系電解質膜の調製2022

    • 著者名/発表者名
      中山孟紀、佐藤克海、梶田貴都、野呂篤史
    • 学会等名
      第33回エラストマー討論会
  • [学会発表] 耐衝撃性を備えたイオン化熱可塑性エラストマーの創製2022

    • 著者名/発表者名
      梶田貴都、野呂篤史、小田亮二、橋本貞治
    • 学会等名
      第71回高分子討論会
  • [学会発表] イオン性官能基を有する高性能熱可塑性エラストマーの創製2022

    • 著者名/発表者名
      太田真瑚、梶田貴都、野呂篤史、加藤大祐、小田亮二
    • 学会等名
      第33回エラストマー討論会
  • [学会発表] 耐衝撃性を備えたイオン性SISの調製2022

    • 著者名/発表者名
      梶田貴都、野呂篤史、小田亮二、橋本貞治
    • 学会等名
      第33回エラストマー討論会
  • [図書] 持続可能な社会を支えるゴム・エラストマー2023

    • 著者名/発表者名
      野呂篤史、梶田貴都、その他
    • 総ページ数
      196
    • 出版者
      化学同人
    • ISBN
      9784759814064
  • [備考] 野呂 篤史 講師|名古屋大学大学院工学研究科有機・高分子化学専攻 高野・野呂グループ

    • URL

      https://phys-chem-polym.chembio.nagoya-u.ac.jp/member-noro.html

  • [備考] 高密度に酸基を有する高伝導高分子電解質膜を開発

    • URL

      https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/upload/20230512_engg.pdf

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公開日: 2023-12-25  

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