流通食品の腐敗による食中毒の発生が社会的な問題となり、包装食品の抗菌処理について、多方面で試みられている。ポリ塩化ビニリデンやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用高分子は、透明性、柔軟性、軽量、低コスト、腐食しにくい、割れにくい、切断面や破片によるケガが少ないなどのメリットから扱いやすく、ガラス容器や缶瓶などの容器を代替する主な食品パッケージ材として使用されている。しかし、ガスバリア性が低く、プラスチックの疎水性表面は細菌が繁殖しやすい問題がある。本研究では、パッケージ本来の良さを保持して、安全かつ持続的な抗菌効果のある抗菌フィルムの開発に関する研究を行った。 申請者は、持続性の高い抗菌効果を得るために、汚染防止と殺菌の両方の機能を併せ持つ表面の作製を目的に、刺激応答性複合機能性高分子の開発に注力した。当初の計画にあった、高密度の高分子ブラシを表面グラフト法では、表面修飾の反応性が悪いと高密度の親水性表面の作製が難しいと考え、高密度の末端基と内部空間を有する多分岐高分子の合成へ方針を変えた。 one-pot合成で得られる多分岐高分子は、高い親水性を示し、内部空間には、カチオン性高分子部位を含むことができた。また、pH変化による表面電荷の変化が確認できた。高い親水性による表面の高い汚染防止効果が期待され、また、早いpH応答性により、表面機能が切り替わる高分子フィルムとして、選択的・効果的な殺菌機能が期待できる。
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