研究実績の概要 |
本研究では,力学応答性を示す白金錯体をポリウレタン主鎖中に組み込むことで,外部応力に応じて鋭敏に蛍光色が変化する強靭性としなやかさを併せ持つメカノクロミックメタロポリマーの開発を目指す。2021年度までに,アルコール部位を有するメカノクロミック白金-アセチリド錯体をモノマーに用いたポリウレタンを合成し,これをすり潰すことで橙色から褐色の蛍光変化が起こることを明らかとしている。しかしながら,得られたポリウレタンは成膜性に乏しく,その力学特性の評価が困難であった。 そこで2022年度はアルコール部位を有するメカノクロミック白金-アセチリド錯体を用いたセグメント化ポリウレタンの合成を実施した。白金-アセチリド錯体含有ジオールと1,6-ヘキサメチレンジイソシアナートに加え,長鎖ジオールとしてポリ(テトラヒドロフラン)(Mn = 2,000),鎖長延長剤として1,4-ブタンジオールを用いて,対応する白金-アセチリド錯体含有セグメント化ポリウレタンを得た。得られたポリウレタンはポリスチレン換算でMw > 100,000の分子量を有し,また成膜性にも優れていた。THFのキャストフィルムより得られたダンベル試験片を用いて引張試験を実施した結果,その引張強度,引張伸度はそれぞれ10 MPa,1,000%以上のであり,良好な力学強度を有していることを見出した。またその伸長時のダンベル試験片の蛍光色をCIEプロットにより解析したところ,伸長に伴い,色調が変化していることが示唆された。
|