研究課題/領域番号 |
21K05204
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
大坂 昇 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (80550334)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポリマーブレンド / 相互侵入高分子網目 / ゴム / 結晶性樹脂 / 高強度化 / 強靭化 / 高弾性化 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、アクリルゴムに結晶性フッ素樹脂をブレンドして架橋を行いセミ相互侵入高分子網目を形成させることでゴムの強度と靭性という通常は相反的な性質が同時的にかつ大幅に向上したことを端緒に、この架橋ブレンドゴムの階層構造と力学物性との関係を分子論的に解明し、高分子材料の力学物性の向上に新たな基礎的指針を確立することを目指している。
2年目までに、DMAやDSC、SAXSによる相溶性の評価を行い、PVDFの結晶ラメラ間に一部のACMが含まれていること、AFM観察からはACMの一部がドメインを形成し結晶化時に高次のスケールで排除されていることが明らかにされた。また、ドメインのサイズは架橋により小さくなっていた。一方、溶融時には昇温でLCST型の相分離を示すことから高温溶融時には非相溶であるが、それより低温の溶融状態では相溶、一方結晶化時には結晶領域からの排除により部分的な相溶になると理解できる。また、架橋による結晶構造への影響を光散乱と顕微鏡を用いて詳細に調べると、球晶成長速度は低下するが、球晶サイズは小さくなることが明らかにされた。これは架橋網目が分子鎖の運動性を抑制するなどのはたらきを示した一方で、架橋剤や架橋助剤が核剤としてはたらいたことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ACMとPVDFの組成および架橋の有無に依存した階層構造、相溶性、力学物性を系統的に評価し、構造物性相関に関する知見を得ることができた。また、成果を論文として出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
顕微鏡観察の結果、PVDFの組成が大きい領域かつ高温での結晶化時に結晶化と競合して相分離に由来すると思われる構造形成が示唆されている。最終年度はこのような特異な構造の形成条件を系統的に調べ、架橋網目と結晶構造だけでなく、相分離の影響も加味した系統的な構造物性相関の確立への端緒につなげることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の当初目標を順調に達成することができ、当初予定していた消耗品や委託測定費用などを減らすことができた。2023年度の目標達成には様々な試行錯誤が予想されることから、生じた次年度使用額をこれら費用に充てることで本研究課題の遂行を目指す。
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