研究課題/領域番号 |
21K05213
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 充朗 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20724959)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 有機半導体 / π共役化合物 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,近赤外領域で効率的な光電変換が可能な有機薄膜太陽電池(OPV)の実現に向け,新たな有機半導体分子を開発することである。近赤外光は太陽光スペクトル中で比較的大きなエネルギーを占めるため,その活用は光電変換効率(PCE)の向上に大きく寄与し得る.また,近赤外光特化型の太陽電池は,可視光透過性や熱遮断性などの付加機能を取り入れたユニークな応用が期待される.しかしながら,現状ではOPVによる近赤外光電変換は一般に効率が低く,既存材料の単純な構造改変では大幅な性能向上は難しい.このような背景のもと本研究では,近赤外光電変換の高効率化における「電子構造の非対称化」の効果を検証し,その結果をもとにキャリア再結合による性能低下を最小化するための分子設計指針の確立を目標とする. 研究初年度である2021年度は,比較的単純なπ共役系を中心骨格として対称型・非対称型の分子を合成し,それらの太陽電池性能を比較した.具体的には,di(2-thienyl)diketopyrrolopyrrole(DPP)の二量体を中心骨格とし,両端もしくは片端にホルミル基を導入した化合物を合成した.それぞれバルクヘテロ接合型OPVにおけるアクセプター材料として評価した結果,いずれの化合物も800 nmを超える近赤外領域で光電変換応答を示した.また,片端にホルミル基を導入した非対称型分子の方が,やや高いPCEを与えることが分かった.この結果は電子構造の非対称化による光電変換特性の向上を支持しており,本研究の基盤となる成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化合物の合成と初期評価を計画通り実施した.一方で,当初期待していたよりもPCEが低いという課題が明らかになった.現在,量子化学計算と分光測定により低PCEの原因解明を進めており,その結果を反映させることで一般性の高い分子設計指針が確立できると期待される.全体としては,おおむね順調に研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って,評価対象を拡大して対称・非対称分子の比較を展開し,系統的な知見を得る.また,光電変換プロセスの素過程について,量子化学計算や分光測定による解析をより積極的に進める予定である.
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