研究課題/領域番号 |
21K05216
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研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
木下 基 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (40361761)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光配向 / 色素 / 液晶 |
研究実績の概要 |
本研究においては、有機EL、有機太陽電池および有機半導体などの有機エレクトロニクスデバイスの性能向上に資する分子配向材料の開発を目指して、遠隔から操作できる光配向性分子の探索を行ってきた。これまでに、オリゴチオフェン誘導体、クマリン誘導体、ベンゾピリドベンズイミダゾール誘導体、ペリレン誘導体など、いくつかの分子骨格が光配向性を示すことを明らかにしている。今年度は、光配向性に及ぼす置換基の効果について明確にすることを目的として、類似骨格をもち、置換基が異なるNileRedおよびPhenoxazone 660を用いて、光配向性について検討した。いずれの分子もある一定以上の光強度で光照射すると、ゆらぎを伴う回折像が観察され、光配向性色素として機能することが明らかとなった。また、Phenoxazone 660を用いたサンプルよりも、Nile Redを用いたサンプルの方が、各照射光強度における回折光の干渉縞数が多いことから、Nile Redを用いた方が液晶の配向変化を効率よく誘起できることがわかった。吸収スペクトルの形状から、Phenoxazone 660およびNile Redは、ほぼ同様な振動構造を有していると判断できるので、光配向挙動に差異が見られたのは、色素の置換基の違いに起因すると考えた。つまり、ジメチルアミノ基をもつPhenoxazone 660よりもジエチルアミノ基をもつNile Redの方が液晶との相互作用が大きいと推察されるので、僅かな色素の動きが効率よく液晶系へ伝搬することによって、液晶の配向変化が大きく誘起されたと解釈した。それゆえ、適切な置換基の導入により配向応答性が向上することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来、用いてきたアルゴンイオンレーザーの代替として、DPPSレーザーを用いて検討を行ったが、ビーム品質が悪いので、光学系の整備に手間取った。このため、色素の光配向性の評価・検討時期が遅くなり研究の進展が遅れたが、本光学系を用いても、十分置換基の影響について明確にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、アルキル置換基が僅かに変わるだけで、光配向性に大きく影響することがわかった。また、光配向挙動は波長選択性が見られることから、光配向に適切な波長の半導体レーザーを導入し、色素の分子骨格が配向及ぼす効果などをZ-Scan法を用いて検討する。得られた結果を基にして、光配向特性と分子構造との相関関係について明確にする。さらに、効率の良い分子が見出された場合は、エレクトロニクスデバイスへの展開を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、従来用いてきたアルゴンイオンレーザーの代替として、DPPSレーザーを用いて検討を行ったが、一波長しか発振できないので、アルゴンイオンレーザーよりも波長に関する検討は簡単にできなくなった。必要に応じて異なる発振波長のレーザーを導入するために、色素の骨格と置換基の効果を重点的に検討した結果、今年度はレーザーの購入を見送ったので未使用額が生じた。次年度は、今年度の結果を基にして、必要な波長のレーザーの導入、および試薬、ガラス器具、スペーサー、光学素子の購入を予定している。また、学会などにおける発表、情報収集、および論文投稿を計画している。
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