研究課題/領域番号 |
21K05219
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
宇田 亮子 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (90321463)
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研究分担者 |
林 啓太 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (10710783)
岩崎 智之 愛媛大学, 学術支援センター, 助教 (50808847)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リポソーム / トリフェニルメタン / がん細胞 / 標的化 |
研究実績の概要 |
がん細胞だけに的を絞り正常細胞へのダメージを抑えて副作用を軽減する薬物送達システムの開発は、我が国の喫緊の課題である。がん細胞特有の嫌気性解糖のために細胞の周囲環境は弱酸性(pH6.2~6.9)となっており、これを利用して正常細胞(pH7.4)には攻撃せずがん細胞を標的にする研究が盛んに行われている。本研究が目指すのは、一つの分子にpH応答性・細胞殺傷性・蛍光性の3つの機能を担わせ、リポソーム膜がつくる疎水性相互作用の場を利用することで、選択的がん細胞の死滅と検出を同時に行う新しい送達システムの創出である。ところでヒドロキシ基などの脱離基を有する中性分子のトリフェニルメタン誘導体は、低pH環境下でカチオンとなり高い細胞毒性と蛍光性を示す。そこで本研究では、この反応をリポソーム膜中で行いトリフェニルメチルカチオンを膜外に放出させることで、酸性環境のがん細胞の殺傷と同時検出が可能な新しい送達システムを提案することを目的としている。本年度は表面に葉酸リガンドを修飾させたトリフェニルメタン誘導体含有リポソームを作製した。リポソームが葉酸リガンドを持つことで、正常細胞への攻撃を抑えがん細胞へのリポソームの集積化が可能となる。このリポソームをがん細胞に添加したところ、未修飾のリポソームに比べてがん細胞殺傷性が向上することが分かった。がん細胞表面の葉酸レセプターとの相互作用により、トリフェニルメタン誘導体含有リポソームの細胞導入が促進されたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉酸リガンドを表面修飾したマラカイトグリーンカルビノール含有リポソームを作製した。このリポソームをColon 26細胞(マウス大腸がん)に添加し細胞生存率を評価した。葉酸リガンド未修飾のリポソームに比べて細胞生存率が低いこと、また先に葉酸を添加して細胞表面の葉酸リガンドをキャップしたColon26細胞では細胞生存率が回復することから、がん細胞表面の葉酸レセプターとの相互作用により、本研究のリポソームの細胞へ導入が促進されたことが分かった。このように本研究の目的の1つである“がん細胞殺傷”のための結果を得ており、研究は順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のリポソームを用いがん細胞を殺傷することに成功した。今後は、トリフェニルメタンによる細胞殺傷のメカニズムについて検討する。加えてもう1つの目的である”がん細胞検出”の点から、共焦点レーザー顕微鏡観察を行いトリフェニルメタンのがん細胞内局在場所を明らかとしてゆく。更にフローサイトメトリーにて細胞の蛍光性のデータを取得し、トリフェニルメタンの導入経路とがん細胞の検出限界を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会での発表がオンライン開催となったため、旅費を中心として執行できなかった。使用計画としては、次年度以降の学会発表での旅費に充てることを考えている。
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