金属酸ナノシートは、層状金属酸塩の結晶構造中の金属酸層が層剥離によりナノシートとなったものである。我々はフレーク状金属酸ナノシート(ナノフレーク)のボトムアップ合成法をこれまでに見出している。本研究ではこの金属酸ナノフレークに対して、大きく分けて2つのことを検討した。ひとつは、半金属性などの高い電気伝導性を示す金属酸ナノフレークを合成することと、このナノフレークの触媒活性を検討することである。もう一方は、金属酸ナノフレークのコロイド水溶液をコーティング溶液としてゾルゲル法により高配向性の層状金属酸塩薄膜を作製し、層間距離を変化させることにより層状金属酸塩薄膜の光学物性の異方性がどのように変化するかを調べることである。 高い電気伝導性を示すナノフレークとしては、ルテニウム酸ナノフレークを中心に検討した。合成においては、適切なルテニウム原料を用いることでルテニウム酸ナノフレークが合成できることが分かった。また、層状窒化炭素とルテニウム酸ナノフレークを複合化させて、水の電気分解に対するナノフレークの助触媒としての活性を調べた。その結果、ナノフレークの代わりに酸化ルテニウムナノ粒子を用いた場合とは全く異なる挙動を示し、ルテニウム酸ナノフレークはpHに関係なく水素発生を促進することが明らかとなった。つまり、この2D/2D複合体のナノ構造がこれに寄与することが分かった。 薄膜の構造異方性が物性の異方性に与える影響については、チタン酸ナノフレークを用いて検討した。薄膜中の層状チタン酸塩の層間距離が短いときは、高配向性であっても屈折率などの物性は高い等方性を示し、層間距離が長くなるにつれ、屈折率の異方性に起因すると考えられる挙動が観察された。つまり、層間距離の制御で屈折率などの物性を等方的な状態から高い異方性をもった状態まで変化させることができた。
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