研究課題/領域番号 |
21K05226
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
田港 聡 三重大学, 工学研究科, 助教 (60771201)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 全固体リチウム二次電池 / 正極材料 / 薄膜電池 / 固体界面 / パルスレーザー堆積法 |
研究実績の概要 |
本研究では,これまでに見出した「蓄電池の全固体化による正極反応の可逆性とサイクル安定性向上」に基づき,反応性の高い有機電解液との副反応で分解するため使用が見送られてきた材料(反応)に着目して,可逆的かつ安定な高エネルギー密度正極反応を示す材料を検討する.高電位側に電位窓が広く化学的に安定なリン酸塩電解質と全固体モデル薄膜電池を構築して,正極反応と構造を評価し,固体電解質と組み合わせることで可逆的な高エネルギー密度反応を示す全固体Li二次電池用の正極材料を見出す.2021年度においては,パルスレーザー堆積法(PLD法)を用いてLiCoO2薄膜を合成し,相同定および電気化学特性を評価した.また,スパッタリング法により固体電解質のLi3PO4薄膜,続けて真空蒸着法で金属リチウム薄膜を積層して全固体薄膜電池を構築した.LiCoO2薄膜に対する基板法線のX線回折図形から,18°付近に菱面体晶格子の003反射を観測し,LiCoO2が基板法線方向にc軸配向することを確認した.電子顕微鏡観察から,固体電解質の積層によるモデル固体界面構築のために十分な平滑性を有する薄膜であることを明らかにした.Li3PO4薄膜を積層してもLiCoO2に由来する回折ピークは観測されたことから,スパッタリングによるLiCoO2へのダメージは無く,全固体薄膜電池を作成することに成功した.定電流充放電試験による電気化学特性評価より,既報の多結晶LiCoO2粉末電極と類似した充放電曲線を示すことを確認し,全固体薄膜電池の電気化学特性を評価する基盤が整った. 今後は,有機電解液を用いたセルの電気化学特性を評価し,今年度得られた全固体薄膜電池の特性と比較し,高電圧,高容量反応時における反応の可逆性,サイクル安定性などの電気化学特性を明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高電位側に電位窓が広く化学的に安定なリン酸塩電解質と全固体モデル薄膜電池を構築して,正極反応と構造を評価し,可逆的な高エネルギー密度反応を示す全固体Li二次電池用正極材料の検討に向けて,以下に示す成果がそれぞれ挙がっている.そのため,これまでの研究は概ね順調に進展していると言える. LiCoO2モデル薄膜電極の合成:LiCoO2が基板法線方向にc軸配向することを確認した.また,モデル固体界面構築のために十分な平滑を有する薄膜であることを明らかにした.有機電解液を用いたセルを作製し,電気化学特性の評価から,既報の多結晶粉末電極と類似した放電曲線を示すことが分かった. 全固体薄膜電池の構築:Li3PO4薄膜を積層してもLiCoO2に由来する回折ピークは観測されたことから,スパッタリングによるLiCoO2へのダメージは無く,全固体薄膜電池を作成することに成功した.また電気化学特性の評価から,既報の多結晶LiCoO2粉末電極と類似した放電曲線を示すことを確認し,全固体薄膜電池の電気化学特性を評価する基盤が整った.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度において,LiCoO2薄膜の合成や,それを用いた全固体薄膜電池の構築に成功し,既報の多結晶LiCoO2粉末電極と類似した放電曲線を示すことを確認したことで,全固体Li二次電池用高エネルギー密度正極材料を開拓するための基盤が整った.次年度以降は当初の計画の通り,有機電解液を用いたセルの電気化学特性を評価し,今年度得られた全固体薄膜電池の特性と比較し,高電圧,高容量反応時における反応の可逆性,サイクル安定性などの電気化学特性を明らかにする.
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