研究課題/領域番号 |
21K05229
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
枝 和男 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (00193996)
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研究分担者 |
大堺 利行 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (30183023)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ポリオキソメタレート / 量子化学計算 / 骨格拡張反応 |
研究実績の概要 |
本研究は,持続可能なエネルギー社会の実現などに資する高機能な触媒技術の開発を目指し,多電子移動やプロトンの出し入れが可能な骨格拡張型閉殻ポリオキソメタレートを開発するため,イオン半径が大きく電荷の小さなヘテロカチオンやプロトンが閉じ込められた骨格拡張型閉殻ポリオキソメタレート構造を構築する原理を確立することを目的としている。 そのため本年度の研究では,1)イオン半径が大きく電荷の小さなヘテロカチオンが閉じ込められた新規の骨格拡張型閉殻ポリオキソタングステートW18の安定性とそれらの閉殻ポリオキソメタレートの骨格拡張反応の反応経路探索に適したビルディング・ブロック構造の探索,2)プロトンが閉じ込められた骨格拡張型閉殻ポリオキソタングステートW18の安定性とそれらの骨格形成反応の反応経路探索に適したビルディング・ブロック構造の探索,3)プロトンが閉じ込められた新規の骨格拡張型閉殻ポリオキソタングステートW18の形成のための母構造候補であるプロトンが閉じ込められたKeggin型タングステートW12の種分化についての3つの項目を第一原理計算について調べた。 当初から予想された通りいずれの項目の研究には多大な計算時間がかかっているが,おおむね順調に研究は進んでおり,閉殻ポリオキソタングステートの骨格拡張反応を調べるための基礎情報は集まりつつある.そして特に3)に関しては現在までの進捗状況で述べるように,すべての研究は完了し,骨格拡張型閉殻ポリオキソタングステートのビルディング・ブロックの選択肢を広げる成果をあげることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で扱う系は構成原子数が多いため,第一原理計算での計算コストが高く,当初から予想される通り長期間にわたる計算機実験の実施が必要である。そのため,上述したすべての研究項目について並行して研究を進めている。 骨格拡張型閉殻ポリオキソタングステートW18にはその両末端にある(タングステン酸の三量体の)キャップ部W3の構造の違いによる2種類のタイプがある上,プロトンが閉じ込められたものに関してはさらに閉じ込めるプロトンの数に1個から8個までの選択肢があるが,本年度研究によりどのようなものが安定に存在できるのかが分かりつつある。 そして今回扱う系の中でもっとも構成原子数が少ない3)の計算についてはそのすべてを完了することができ,これまで明らかになっていなかった4個のプロトンを閉じ込めた新規のKeggin型タングステートW12が存在できる可能性を明らかにすることができた。そして,3個あるいは新規に見出された4個のプロトンを閉じ込めたKeggin型タングステートを既に存在が知られ,市販でも手に入れることができる2個のプロトンを閉じ込めたKeggin型タングステートW12から形成する反応の固有反応座標の探索や熱化学解析も行うことができた。これにより,骨格拡張型閉殻ポリオキソタングステートのビルディングブロックとして利用できるタングステートの選択肢を広げることができた.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は,1)イオン半径が大きく電荷の小さなヘテロカチオンが閉じ込められた新規の骨格拡張型閉殻ポリオキソタングステートW18の安定性とそれらの閉殻ポリオキソメタレートの骨格拡張反応の反応経路探索に適したビルディング・ブロック構造の探索および2)プロトンが閉じ込められた骨格拡張型閉殻ポリオキソタングステートW18の安定性とそれらの骨格形成反応の反応経路探索に適したビルディング・ブロック構造の探索についての計算機実験をさらに進めた後に,その成果に基づいて4)イオン半径が大きく電荷の小さなヘテロカチオンが閉じ込められた閉殻ポリオキソタングステートにおける骨格拡張反応と5)プロトンが閉じ込められた閉殻ポリオキソタングステートにおける骨格拡張反応について第一原理計算により調べる。また,6)今年度の研究で明らかになったプロトンを閉じ込めた新規のKeggin型タングステートの単離とそれらの骨格拡張型閉殻ポリオキソタングステートのビルディング・ブロックとしての反応性について実実験により調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初申請した予算に対し配分された予算はかなり減額されたものであるため,研究計画を見直す必要があった.効率よく研究計画の目的を実現するため,計算機実験を先行し,その成果に基づき実実験を実施することに変更したためであり,残した予算は実実験用である。来年度以降に残した経費を有効に利用して,実実験も実施する計画である.
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