最終年度となる2023年度は、PCP光触媒の無機クラスター部位に対する熱アシスト効果をより詳細に検討するため、無機クラスターを単独で合成し、それに及ぼす影響を評価した。可視光吸収能が期待される無機クラスターであるCeクラスターを対象とし、その合成を試みるとともに、ニトロベンゼンの光触媒的還元反応を用いて評価検討を行った。 Ceクラスターは、硝酸二アンモニウムセリウムとグリシンを出発原料とし、飽和食塩水中での反応を通して合成した。得られたCeクラスターは波長およそ450 nmに吸収端を示し、可視光吸収が可能な材料であることが確認された。同クラスターをニトロベンゼンの光触媒的還元反応に適用すると、光照射の開始とともに反応の進行が認められ、主生成物としてアニリンを与えたことから、有効な活性点を有する光触媒として機能していることが明らかとなった。さらに、反応温度を20℃から40℃に上げることにより、その光触媒反応活性が大きく向上するという結果が得られた。このように、無機クラスター単独であっても配位子乖離を促進させる熱アシスト効果の発現が確認され、当該研究におけるPCP光触媒設計指針の有効性を確かめることができた。 研究期間全体を通して、無機クラスター表面での活性点構造構築に関する知見を蓄積することできた。また、Ti系PCP光触媒、MIL-125-NH2(Ti)に対する熱印加による活性向上効果と、光と熱の同時印加条件での効果的なPt助触媒担持を示す結果が得られており、当該研究課題を順調に進めることができたと言える。
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