研究課題/領域番号 |
21K05232
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
伊藤 建 東海大学, 理学部, 教授 (50376935)
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研究分担者 |
小口 真一 東海大学, 理学部, 准教授 (90580499)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 無機-有機ハイブリッド / ポリ酸 / 界面活性剤 / イオン液体 / 伝導性 |
研究実績の概要 |
タングステンやモリブデン、バナジウムのオキソ酸水溶液に界面活性剤溶液を加え、無機-有機ハイブリッド結晶を合成した。合成溶液の液性(pH)や、結晶化の条件(溶媒、pH、温度など)を精密に制御することにより、複数種の無機-有機ハイブリッド結晶を得た。単結晶X線構造解析の結果から、いずれも新規化合物であることを見出した。 タングステンのポリ酸アニオンとアミン系双頭型界面活性剤を用いた場合は、ハニカム状にポリ酸アニオンが配列した1次元トンネル構造をもつ無機-有機ハイブリッド結晶が得られた。アミンの遊離性プロトンに起因するプロトン伝導性はそれほど高くはなかったが、加湿によりプロトン伝導率が2ケタ程度向上することを見いだした。今後の材料設計に有用な知見であると考えられる。 有機カチオンとして重合性イオン液体を用い、モリブデンのポリ酸アニオンを用いた場合には、ナトリウムイオンやアンモニウムイオンを含有するハイブリッド結晶を得ることができた。これらのハイブリッド結晶は組成が明確かつ高収率で得ることができるので、ナトリウムイオン伝導性やプロトン伝導性の発現が期待できる。 解離性プロトンを有するスルホ基を導入したポリエーテル系界面活性剤を合成し、ヘテロポリ酸との複合化も試みた。タングステン系ポリ酸アニオンとハイブリッド化させた材料を合成することができた。これらハイブリッド材料については、単離条件の確立および収率の向上を図り、結晶化とプロトン伝導性の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状で、目的とするプロトン含有型無機-有機ハイブリッド結晶の合成できている。得られている知見を活かして測定条件を最適化していくことにより、高プロトン伝導性を発現させることができると期待される。また、ナトリウムイオンやアンモニウムイオンを含有するハイブリッド結晶を合成できており、これらのイオン伝導性の検討を通じて、燃料電池およびナトリウムイオン電池などへの展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに得られた結果を基に、分子設計を行うことにより、プロトンを含有した無機-有機ハイブリッド結晶を合成していく。得られたハイブリッド結晶について、X線構造解析と元素分析により組成と分子構造を明らかにする。平行してプロトン伝導性を検討していき、組成と伝導性の関係を明らかにしていく。得られた結晶の水蒸気耐性や熱安定性を考慮しながら、高プロトン伝導性を発現するための必要条件を抽出し、高プロトン伝導性を発現するハイブリッド結晶の合成につなげる。 高プロトン伝導性を発現するハイブリッド結晶の合成方法を確立するために、合成されたハイブリッド結晶のX線構造解析を行い、結晶を構成する化学種の分子構造とパッキングを明らかにしていく。得られた測定データの処理および解析作業の効率化(高速化)と、複数名での並列処理を可能とするため、データ処理専用のパーソナルコンピュータを購入する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時では、水熱合成のためにマイクロ波合成装置を購入する予定であったが、水熱条件下でなくとも目的とするプロトン含有型無機-有機ハイブリッド結晶を合成できている。そのため、マイクロ波合成装置の購入を見送り、次年度への繰越金額が生じたが、繰越金で研究遂行に必要な薬品やガラス器具の購入に充てる予定である。
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