研究課題/領域番号 |
21K05233
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝宗 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 講師 (10595888)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多孔体 / 薄膜 / 光触媒 / 結晶格子歪み / ゾルーゲル法 |
研究実績の概要 |
光触媒の活性向上のためには、光励起により生成した電子-正孔対の解離および引き続く光キャリア移動を効率的に行うことが必要である。それらは、光触媒表面に形成された空間電荷層がもたらすバンド屈曲に由来する電位を機動力として行われるが、しばしば光触媒深部まで十分な電位が形成されていない。そのため、試料深部で生成した光キャリアは再結合により失活してしまい、反応に利用できなかった。 そこで本研究は、メソ細孔がもたらす結晶格子歪みを活用して細孔骨格内に電位勾配ならびに双極子モーメントを誘発し、電子-正孔対の解離ならびに光キャリア移動を促進することで、光触媒活性を向上させることを目的とする。本年度は、光触媒の代表的材料である酸化チタンを選択した。 申請者の先行研究に基づき、ランタンアルミネート(LaAlO3)単結晶基板上に疑似単結晶骨格を有するメソ多孔性酸化チタン薄膜を作製した。本試料は、エネルギー的に不安定であるものの光触媒活性の高い(001)面が露出しており、表面に付着したオレイン酸の分解実験から、結晶方位面の制御により光触媒活性が著しく向上することを確認している。しかし、この評価方法では、薄膜最表面の活性しかわからないため、多孔性薄膜内部も加味したメチレンブルー(有機色素)の分解実験から光触媒活性の評価を試みた。 可視吸光スペクトルのピーク強度変化より、メソ多孔性酸化チタン薄膜に吸着したメチレンブルーおよび光触媒反応により分解したメチレンブルーの定量を行った。2時間の紫外線照射で、薄膜が吸着したメチレンブルーの2.5倍量のメチレンブルーの分解を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本試料は膜厚が薄く(100 nm程度)、酸化チタンの量が極微量であるため、メチレンブルーの分解実験による光触媒活性評価はこれまで非常に困難であった。しかし、UV-LEDスポット照射装置を用いて照射紫外線強度を上げると共に、反応系の最小化により検出感度を上げたことで、光触媒活性の評価に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
比較となる無孔性酸化チタン薄膜を作製し、メチレンブルーの分解実験を実施する。分解したメチレンブルーの量を試料表面積あたりで規格化し、光触媒活性の増加分には表面積増加だけでは説明の付かない要素があることを明らかにする。 また、高分解能透過電子顕微鏡像を用いて結晶の微細な格子歪みを解析・可視化するFFTM法および第一原理計算により、メソ細孔由来の結晶格子歪みが光触媒活性向上の重要な要素であることを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
UV-LEDスポット照射装置は別予算で購入した。また、計上していた国内・国際学会への旅費は、コロナ禍により学会がオンライン開催になったため使用しなかった。今後、学会のオンライン化・ハイブリッド化により旅費が不要になった場合は、設備費や消耗品費に充てる。
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