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2022 年度 実施状況報告書

酸化セリウムナノ粒子を触媒としたゲノム解析キットの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K05235
研究機関東京工科大学

研究代表者

須磨岡 淳  東京工科大学, 工学部, 教授 (10280934)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード酸化セリウム / ナノ粒子 / 核酸 / DNA / ゲノム / 加水分解
研究実績の概要

本研究で開発を目指す「酸化セリウムナノ粒子を触媒としたゲノム解析キット」は、DNA切断活性を持つ酸化セリウムナノ粒子と塩基配列を認識するペプチド核酸(PNA)から構成されている。従来の我々が開発した人工DNA切断酵素では、触媒としてCe(IV)/EDTAを使用していた。この触媒は、一本鎖DNAには活性があるが二本鎖DNAはほとんど活性がないという特長があり、これを利用してPNAが二本鎖DNAにdouble-duplex invasionすることにより形成する一本鎖部分を切断して選択的な切断を実現していた。今年度は、この、一本鎖DNAと二本鎖DNAの識別能を酸化セリウムナノ粒子が有するかの検討を行った。従来のCe(IV)/EDTAと同様の特長を有していれば、ゲノムDNAの標的部分の切断が実現し、ゲノム解析キットの開発につながることが期待される。昨年度までの研究で、基質としてチミジリル(3’→5’)チミジン(TpT)が市販の酸化セリウムナノ粒子により迅速に加水分解されることを明らかにしている。そこで、今年度はPCR産物の二本鎖DNA(約400塩基対)やDNAオリゴマー(一本鎖DNA約80 mer、および、これに相補的な約40 merのDNAを加えて部分的に二本鎖としたもの)を基質として使用し、酸化セリウムナノ粒子の触媒活性をポリアクリルアミドゲル泳動を用いて評価した。その結果、酸化セリウムナノ粒子は、DNAオリゴマーに対しても触媒活性があることが明らかになった。また、その切断活性は、わずかであるが一本鎖DNAと二本鎖DNAとで異なっていた。しかし、PNAによる標的部位での一本鎖部分の形成能が不十分であり、より高効率なdouble-duplex invasionを実現することが重要な課題である。ここで、PNAの末端をある種のシアニン色素で修飾すると、特定の条件下においてinvasion複合体が安定化することが明らかになってきた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本本研究で開発を目指す「酸化セリウムナノ粒子を触媒としたゲノム解析キット」は酸化セリウムナノ粒子とペプチド核酸から構成されている。研究を進めていく中で、二本鎖DNAへのPNAのdouble-duplex invasion効率を上げることも必要であることが明らかになってきた。そこで、新たにシアニン色素を導入したPNAの合成を行なった。これまでカチオン性の色素のモノマーの合成の経験がなく、予想以上に精製に手間取ったことが大きな要因である。今後さらに種々の色素モノマーの合成を試み、より効率的にinvasionするPNAを探索する必要があるため、新たにカラムを購入してモノマー精製の効率化に鋭意取り組んでいる。また、精製の効率化のためには、現有のHPLCをリサイクル型にバージョンアップすることが特に有効であり、すでにバージョンアップのためのユニットを別途予算での購入を申請しているが、半導体・電子部品の供給不足もあって入手が遅れている。本ユニットが入手できれば、大きく進展するはずである。

今後の研究の推進方策

引き続き種々のカチオン性の色素やアミンで修飾したPNAを合成し、二本鎖DNAへのdouble-duplex invasion効率の向上を図るとともにキット化を試みる。ここで、キット化するにあたって、ビオチンをペプチド核酸の末端に結合し、ビオチン-アビジン結合を利用したビーズにより目的DNA断片のみを選択的に回収する手法を確立する。また同時に、酸化セリウムナノ粒子を種々の方法で合成し、DNAの切断活性の向上を図る。これは、リン酸トリエステルの加水分解に対して、酸化セリウムナノ粒子の調製法によりその活性が大きく異なることがすでに報告されているからである。酸化セリウムナノ粒子については、XPSなどの分光学的手法や電子顕微鏡を用いて、粒子の形状や酸化状態とDNAの切断活性の相関を明らかにする。さらに、他の金属(例えばプラセオジムなど)をドープしたようなセリウムナノ粒子の活性についても、そのDNA切断活性を評価し、ゲノム解析キットに最適なナノ粒子の開発を行う。

次年度使用額が生じた理由

カチオン性色素を導入したペプチド核酸のモノマーの精製が難しいという問題が生じており、これを分離精製するために分取用のカラムを購入した。精製に時間がかかっている影響で、ペプチド核酸オリゴマーの合成にも遅れが生じている。その結果、当初計画で購入を予定してたペプチド核酸(オリゴマー)を分取精製するための高速液体クロマトグラフィー装置の強化のための機器(合成されたPNAの性質でどのような機器とするか選定予定)の購入に遅れが生じている。また、セリウムナノ粒子を合成するのためのオートクレーブ容器の購入などを予定してる。その他の使用計画については、当初計画から大きな変更はなく、汎用試薬、酵素類、マイクロチューブやマイクロピペットチップ、ガラス器具などの基本的な消耗品である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] シアニン色素修飾PNAによる二本鎖DNAへのインベージョン2023

    • 著者名/発表者名
      尾身 勇輝、須磨岡 淳
    • 学会等名
      日本化学会 第103春季年会

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公開日: 2023-12-25  

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