不均一系光触媒の活性は、結晶型、結晶性、粒子サイズなど、一次粒子の物性に依存することが良く知られているが、最近、“メソ結晶”と呼ばれる結晶が規則的に配列した集合体構造も光触媒活性に強く影響を与えることが明らかになりつつある。中でも、多数のルチル型TiO2ナノロッドで形成されたマイクロサイズの放射状メソ結晶(rad-TiO2 MC)は、大きな表面積を持ち、ロッド間での光の多重散乱によって効率良く光を吸収することから、光触媒材料として大きな潜在能力を有する。そこで最終年度は、これに金ナノ粒子を担持したAu/rad-TiO2 MC型プラズモニック光触媒の検討を行った。Au/rad-TiO2 MCは、不定形TiO2ナノ粒子を用いたAu/TiO2 NPや、Au/rad-TiO2 MCをすりつぶすことで集合体構造を破壊した触媒と比べて、大幅に高い光触媒活性を示した。さらに、プラズモニック光電極による光電気化学測定により、放射状メソ結晶が光反応領域と暗所反応領域の2つを内包する特異的な光触媒であることを明らかにした。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、1) CuSを用いた光電気化学測定により、正孔誘起LSPRの励起でCuSから担体へのホットホール注入が起こることを明らかにすることができた。2) プラズモニック材料と担体とのドメインマッチングヘテロエピタキシャル接合により、プラズモニック光触媒電極の活性が飛躍的に向上することを明らかにした。3)担体の集合体構造により、特異な反応場を形成出来ることが明らかとなった。これらにより、正孔誘起プラズモニック光触媒による近赤外光利用ソーラー水素合成の可能性を大きく広げることが出来たと考えている。
|