研究課題/領域番号 |
21K05238
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研究機関 | 新居浜工業高等専門学校 |
研究代表者 |
平澤 英之 新居浜工業高等専門学校, 環境材料工学科, 准教授 (60511540)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フェライト / 自己発熱 / 交流磁場 / ナノ粒子 / 生体適合 |
研究実績の概要 |
本研究は、がんの新しい治療技術として提案している『誘導焼灼治療』の実用化を目指すものであり、①交流磁場中で著しく自己発熱するフェライト微粒子の開発、②交流磁場加熱における新たな発熱メカニズムの学術的解明、さらに③ドラッグデリバリーシステムの応用を目指したフェライトのリポソーム包埋試験を行う。 令和5年度は、令和4年度までの研究により開発した高発熱磁性微粒子材料について、その発熱能力を最大にする合成条件を検討し、MgFe2O4にMn, Niを置換した置換型Mg1-XMXFe2O4をソルボサーマル法により合成した。さらに、フェライト磁性ナノ粒子のリポソーム包埋処理技術を確立するため、アゾレクチンを水溶させた超音波処理によりMgFe2O4ナノ粒子のリポソームへの包埋に成功した。ソルボサーマル法により合成したMgFe2O4系フェライトでは、これまでに報告例の ない、交流磁場中で2段階の温度上昇が起こる特異な発熱挙動を示すことを発見し、交流磁場加熱における新たな発熱要因の可能性を示唆する知見が得られた。このような発熱挙動について、メカニズムをヒステリシス損失の観点から考察した結果、交流磁場中での発熱能力とヒステリシス損失に明確な依存性は見られず、特に発熱能力が最大となったMgFe2O4では逆にヒステリシス損失が低下する結果を示した。この新たな発熱メカニズムを解明するため、周波数・あるいは磁場強度を変化させた発熱試験を行い、ネール緩和・渦電流損失・ヒステリシス損失と発熱メカニズムの関係について明らかにする必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではがんの新しい温熱治療法として提案されている『誘導焼灼治療』の実用化を目指し、①交流磁場中で著しく自己発熱するフェライト微粒 子の開 発、②交流磁場加熱における新たな発熱メカニズムの学術的解明、さらに③ドラッグデリバリーシステムの応用を目指したフェライトのリポソーム包埋試験を行う。 令和5年度は、交流磁場中で発熱する磁性材料の合成条件の確立と、その発熱能力を最大化することを目標としており、ソルボサーマル法により著しく発熱するMgFe2O4微粒子を開発し、イオン置換によるMgFe2O4の発熱能力の向上に成功している。さらに令和5年度には、研究当初からの目標である高発熱磁性ナノ粒子のリポソーム包埋試験に着手し、TEM観察による結果から、リポソーム内へのMgFe2O4系ナノ微粒子の包埋に成功している。令和6年度にはリポソーム包埋粒子の発熱試験と生体への応用を目指す予定であり、現在のところ、本申請研究開始時の計画通りに材料開発が成功しており、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
先述の通り、本研究では、申請研究期間において①交流磁場中で著しく自己発熱するフェライト微粒子の開発、②交流磁場加熱における新たな発熱メカニズムの 学術的解明、 さらに③ドラッグデリバリーシステムの応用を目指したフェライトのリポソーム包埋試験を行なう。現在までに交流磁場中で著しく発熱する磁性ナノ粒子の開発、および高発熱能を有するMgFe2O4のナノ粒子のリポソーム包埋まで成功しており、今後はこの特異な発熱メカニズムの学術的な解明を目標としながら、生体への応用を目指した細胞毒性試験とリポソーム包埋試料の発熱試験を行う。具体的には、発熱メカニズムの解明のため、磁場強度・周波数をそれぞれ変化させた発熱実験を行うとともに、有限要素法によるコンピューターシミュレーションから 実験値と解析を相互に行い発熱メカニズムの特定に挑戦する。また、得られた最適な発熱磁性材料について、リポソーム中へのフェライト封入率を向上させる最適な条件を明らかにするとともに、リポソームに包埋された磁性材料の交流磁場特性を測定し、リポソームの熱耐久性からフェライト漏出量に至るまで、発熱医用研究への応用に至る基礎データの取得を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度末に交流磁場誘導加熱に利用する整合器が故障し、修理を依頼するため予算を計上していたが、年内に修理が間に合わなかった。そこで、次年度予算として早々に修理を依頼し、今後の研究に活用する予定である。
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