研究課題/領域番号 |
21K05245
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
東 正信 大阪市立大学, 人工光合成研究センター, 特任准教授 (10711799)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人工光合成 / 光触媒 / 生体触媒 / 二酸化炭素還元 |
研究実績の概要 |
太陽光エネルギーを化学エネルギー(二酸化炭素還元によるギ酸の生成や水分解による水素製造)に変換する人工光合成は、人類が直面しているエネルギー問題や環境問題を解決できる可能性を有しており、近年盛んに研究されている。本研究では、半導体光触媒が有する欠点(反応の選択性)を、目的の反応をほぼ100%の選択率で進行させる生体触媒カバーする、半導体光触媒-生体触媒を組みあせたハイブリッド型人工光合成系の開発行うことを目的としている。 まず初めに、バンドギャップが小さく(約1.5 eV)、資源的に制約の少ないCuInS2硫化物光カソードを用いた系の構築を試みた。ギ酸脱水素酵素(FDH)の人工補酵素として機能するメチルビオローゲン(MV)の還元に対する光電気化学特性を調べたところ、CuInS2のみでは還元電流がほとんど観測されなかったのに対し、CuInS2表面を硫化物カドミウム(CdS)で修飾すると、光電流が飛躍的に向上し、波長700 nmにおいての光電変換効率が80.3%と高い値を示した。この還元電流は、MVの一電子還元由来であることを確認している。さらにFDHを添加して二酸化炭素還元を試みたところ、ギ酸が生成しており、CdS/CuInS2光電極、電子伝達体MVおよび生体触媒FDHと組み合わせることで可視光駆動型二酸化炭素還元系の構築を実現した。 また安定な硫化物光アノードの開発も行ったところ、平滑な表面を有したCdS光アノードが安定にフェロシアン化物イオンを酸化でき、対極側で二酸化炭素のCOへの直接還元、またRh錯体を用いたNAD+の還元ができることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CuInS2を光カソードとして用いることで900nm付近までの可視光を利用し、高効率(光電変換効率:約80% at -0.4V vs Ag/AgCl)に電子伝達体であるMVを還元し、さらに生体触媒FDHと組み合わせることで二酸化炭素をギ酸に変換でき、ハイブリッド型人工光合成系を構築できた。さらに、酸素生成系との組み合わせを検討しており、無バイアス条件下で光電流が観測されるまでは確認している。 光アノードを用いた系の開発も行っており、CdS光アノードを用いることで、天然の補酵素(電子伝達体)であるNAD+の還元が可能となり、二酸化炭素のギ酸への変換(酵素:FDH)だけでなく、他の酵素を用いることで様々な物質変換が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
CuInS2光カソード、電子伝達体であるMV、生体触媒FDHを用いることで二酸化炭素をギ酸に変換できたことから、次は水を電子源にするため酸素生成系の検討を行う。具体的には酸窒化物光アノードの調製法や溶液の条件を検討する。さらに、CuInS2光カソードを用いたNAD+のNADHへの還元を検討する。 CdS光アノード系では、対極上でロジウム錯体を用いたNAD+の還元を達成したことから、こちらも酸素生成系の導入を検討し水を電子源にした二酸化炭素還元を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で国際学会に行けなくなった分旅費が少なくすんだ。また、安価で電気化学測定装置を自作できるようになったため、物品費が抑えられた。効率良く実験が進められるように、実験系の構築に費用をあてる予定である。
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