研究課題/領域番号 |
21K05251
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
斉藤 誠 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (50736288)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フッ化物イオン / インターカレーション |
研究実績の概要 |
モリブデン系シアノ架橋金属錯体(Zn2Mo(CN)8)へのアニオン挿入脱離反応の検討として、研究年度1年目は①金属錯体構造中の空隙サイズの制御、②挿入アニオンサイズによる反応制御の2つの課題について検討を進めた。 ①金属錯体構造中の空隙サイズの制御、については、空隙サイズを制限した錯として、ZnをNi(eda)x(eda = エチレンジアミン)などの配位子が付いた大きな錯イオンに置き換えた錯体を合成し、そのフッ化物イオン挿入脱離反応を検討した。その結果、ZnをNi(eda)xに置き換えた錯体においては、酸化還元反応が全く見られず、錯体中の空隙サイズが酸化還元反応に重要な役割を果たしていることが示唆された。 また、②挿入アニオンサイズによる反応制御、については、フッ化物イオンよりも大きな塩化物イオンや硫酸イオンを含んだ水溶液中でモリブデン系シアノ架橋金属錯体の電気化学的酸化還元反応を行い、フッ化物イオンのみがシアノ金属錯体に挿入脱離していることを確認した。さらに、酸化前後の試料におけるフッ素の状態を19F NMR測定にて評価したところ、酸化後の試料からは-130 ppm付近に新たなピークが観察されたことから、フッ化物イオンが新たな化学状態を取っているものと考えられ、錯体中へ挿入されていることが示唆された。 あわせて、モリブデン系シアノ架橋金属錯体のフッ化カリウム水溶液中における安定性を0.1 mol/L~飽和の濃度域で評価し、10 mol/L以上の濃度域では安定性が向上し、塩基性雰囲気下では安定性が向上することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題の取り組み内容の、①金属錯体構造中の空隙サイズの制御、については空隙サイズを制限した錯体を合成し、フッ化物イオンの挿入脱離が阻害されることを確認した。 ②挿入アニオンサイズによる反応制御、については塩化物イオンや硫酸イオンなど大きなアニオンが錯体中に挿入できないことを確認し、挿入アニオンサイズが肝要であることを確認した。 上記、2つの課題に対して一定の進捗があったため(2)おおむね順調に進展していると評価した
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今後の研究の推進方策 |
①金属錯体構造中の空隙サイズの制御、については錯体合成時の条件(温度・自由水)などを検討していく。 ②挿入アニオンサイズによる反応制御、については非水溶液系での酸化還元反応を検討していく。
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