半導体光触媒であるTiO2表面上に有機分子触媒としてサドル型歪みを有するドデカフェニルポルフィリン(H2DPP)をカルボン酸リンカーによって化学的修飾をおこなった有機無機ハイブリッド触媒を用いた光触媒的過酸化水素生成反応の開発を行った。また、光触媒反応を可視光応答させるための方策として、紫外線のみ吸収するTiO2ではなく、有機光増感剤の自己集合化による半導体化を利用して、可視光応答型の光触媒系の開発を行った。 H4DPP2+-(COOH)4をTiO2に固定した有機・無機ハイブリッド触媒(H4DPP2+-(COOH)4-TiO2)を水中で分散させ、空気下で波長365 nm (4.8 W)の紫外線を照射した。ヨードメトリー法によって反応溶液中のH2O2濃度を決定した結果、1分間の光照射で0.3 mMのH2O2生成が観測された 。また、光照射時間あたりのH2O2生成速度は、11.5 nmol/sであり、既報の光触媒的H2O2生成と比較して最大速度を達成した。本触媒反応系における外部量子収率は12%と決定し、市販のTiO2を利用したハイブリッド触媒の中では高い値であることがわかった。 また、既報の可視光応答型光触媒を参考に、サドル型歪みを有するジプロトン化ドデカフェニルポルフィリン(H4DPP2+)のmesoフェニル基に4つのホルミル基(DPP-CHO)を導入することでアミン類(R-NH2)とのイミン形成(DPP-CH=N-R)に基づく有機半導体光触媒を設計した。本有機半導体光触媒に可視光照射を行うことで生成する過酸化水素量を定量し、その光触媒活性を最適化した結果、4時間の白色光照射で4 mMの過酸化水素水が生成した。有機半導体光触媒を再利用した際にも同程度の触媒活性を示したことから、高い耐久性を有していることが判明した。
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