本年度は、中温域での酸素還元触媒の評価に適した電気化学評価セルの開発を目的の一つとした。新しい電気化学評価セルは、アノード・カソードを分離せず、1室型とした。さらに、開発された電気化学評価セルを用いて、触媒の電気化学特性評価を行った。昨年度は、電解質と触媒候補材料との安定性の評価を行い、カーボンの消失、 Nb2O5とFe2O3の変化以外は、安定に存在しうることがわかっている。そこで、本年度は、高い電池性能を示すために、まず貴金属材料の評価を試みた。PtやAu薄膜のモデル電極を用いて電気化学測定を行ったところ、電気化学特性が適切に評価できることがわかった。最終的に本事業として以下の成果が得られた。 ①加湿酸素雰囲気での自然電位は、電極材料の種類には大きく依存せず、300 ℃では-100 mV程度、350 ℃では、-40~-50 mV付近、400 ℃では-10 mV付近を示すことがわかった。そして、この自然電位は酸素還元活性とよい相関があり、高い自然電位は、高い触媒能を示す場合が多いことがわかった。つまり、自然電位は酸素還元触媒能の評価パラメータになりうる。 ②貴金属材料において、電位走査に伴う触媒能の低下が観察された。そして、Pt、Auでは、自然電位が元に戻るまで長時間放置することにより、触媒能が回復することがわかった。 ③評価系は、バルクの抵抗と粒界と反応を容量成分と抵抗成分を並列にした電気的等価回路で表されることがわかった。さらに、バルク抵抗と粒界抵抗に比べて、反応抵抗は遥かに大きく、分極特性は反応抵抗支配であることがわかった。 ④Auをスパッタで蒸着した薄膜電極の場合、電解質に直接成膜することで、モデル電極となることがわかった。成膜直後は高分散しているが、400 ℃、加湿O2雰囲気下での長時間の電気化学測定により、Auが数百nm程度に凝集した粒子になることがわかった。
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