研究課題/領域番号 |
21K05258
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
石井 陽祐 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80752914)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 高圧力 / 電気化学 / ダイヤモンドアンビルセル |
研究実績の概要 |
本研究は1ギガパスカルを超える超高圧力環境下で電気化学測定を行うための新たな実験技術を開発し、電池電極反応に及ぼす圧力の影響を明らかにすることを目的としたものである。この目的を踏まえ、初年度はこの実験を実現するための装置整備と実験技術の開拓を実施した。 ギガパスカルオーダーの高圧力を発生させるための方法として、ダイヤモンドアンビルセルを用いた検討をおこなった。これは直径100マイクロメートル程度の穴をあけた金属板(ガスケット)を2つのダイヤモンド結晶の間に挟み込んだ構造の装置である。ガスケットの穴の中に測定試料(本研究では電池電極や電解質)を詰め、ダイヤモンド結晶間の距離を近づけていくことで、試料に高圧力を印加することができる。ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧電気化学実験を実現するためには、ダイヤモンドアンビル内の試料に電気を流すための導線を2本以上設置しなくてはならない。この際、導線と金属ガスケットの電気的な短絡を抑制する必要があり、工夫が必要である。このための方法として、本研究ではガスケット表面に窒化シリコン薄膜(絶縁層)を蒸着するのが有効であると考え、検討を行った。 窒化シリコン膜の蒸着は高周波スパッタリング法を用いて行った。圧力をかけてガスケットが変形しても導線間の絶縁性が維持できる蒸着条件を探しだし、ダイヤモンドアンビル内に電池構造を構築できる段階まで到達した。 次年度の研究ではこのセルに対して電気を流し、本格的な電気化学実験を開始する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の実施期間は3年間である。1年目に高圧実験のための装置開発を行い、2年目からはその装置を用いた電気化学実験を開始する計画をたてた。 初年度はダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧実験の方法について、当初予想されたガスケットの絶縁性の問題を解決する手法の開発に成功し、高圧装置内に電池電極構造を構築する段階まで到達したため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
電池反応に対する圧力の影響について理解するためには、高圧力下での電気化学測定だけでなく、電池構成部材を対象とした高圧力下での分光実験や構造解析などの実験が必要になると予想される。ダイヤモンドアンビルセルは、圧力を印加しながらのラマン分光測定や放射光X線回折実験などが行いやすいという利点があるので、それらの測定も併用した実験を進めていきたい。
|