研究課題/領域番号 |
21K05262
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
福永 明彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (00578247)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CO2還元 / 電解還元 / 複合電極 |
研究実績の概要 |
地球温暖化対策の一つとしてカーボンリサイクルが注目されている。中でも二酸化炭素(CO2)の電解還元は、CO2の有効利用に加えてCO2フリーな素材や燃料を製造できる可能性がある。しかしながら、これまでのCO2の電解還元においては、十分な、多段階反応が難しい。そこで、ドライプロセスを用いて新規な複合電極を創製することによりCO2から、有用な化成品を直接電解合成することを目指す。その反応機構は、ワンステップでCO2から、CH3OHやCH4を生成するのではなく、第1ステップで2電子還元によりCOを生成した後、第2ステップで、4電子還元や6電子還元を起こし、CH3OHやCH4などへ、効率的な電解合成を目指すものである。このようなドミノ的多段階反応を自発的に連続して起こす新規なナノ構造を有した複合電極を創製する。以下のその研究手順を示す。 1)各種金属の性能把握:イオンビームスパッタによりAu、Cu等の電極を作製しその材料のミクロ構造がCO2の還元特性にどのような影響を与えるのか明らかにする。また、表面修飾がCO2の還元特性にどのような影響を与えるのか解明する。 2)連続反応の進行検討:COとの結合エネルギーが異なる2種類の金属をナノスケールで組み合わせた電極をイオンビームスパッタとレジスト膜を用いて面積比や空間配置等を変えて作製し、組合せ金属毎の中間生成物とH+の相互移動形態を解明し、連続反応の進行を明らかにする。 3)新規複合電極の創製:レーザー描画装置を用いて、電極材をナノスケールで、最適に組み合わせ配置した新規複合電極を創製して、そのCO2の電解還元特性を明らかにする。 今年度は2年目として、電極表面の改質に加え、新規複合電極の試作を行い、円盤状および線状の複合電極を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目として計画通り以下の研究を実施した。 イオンビームスパッタを用いて、シリコン基板上AuおよびCu薄膜100nmから200nmを形成した後、表面にArスパッタを施し電極のCO2還元特性(生成物、各ファラデー効率、部分電流密度)における効果を炭酸水素カリウム溶液中で明らかにした。生成物の定量には、FIDおよびTCD付のガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、質量分析付きガスクロマトグラフィーを用いた。作製したそれら電極の状態はXPS、SEM、XRD、AFMを用いて解析を行い、化学的結合状態、表面形態、結晶の配向性、表面粗さについて解析した。以上の結果から、複合電極の主要構成金属に表面改質を施した際のCO2還元特性について、把握することができた。 多段階反応を目的とした複合電極の試作を行った。ベースとなる金属薄膜をイオンフレーティングで作製後、スピンコートにてレジスト剤PMGI SF5とTSMR-V90 10CPを2層にコーティングした。レーザー描画装置にてレーザーを照射し、その後NMD-3によって現像を行った。現像後に200 nmの金属薄膜をスパッタリングにて形成し,最後にレジストを剥離して電極を作製した。直径1μmのAu又はCuを1μm間隔に規則的に配置することができた。今後、CO2電解還元と各種物性測定の結果について調査する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度において以下の研究を行う計画である。 前年度に続き、連続反応(ドミノ的反応)の進行検討:COとの結合エネルギーが異なる2種類の金属をナノスケールで組み合わせた電極をイオンビームスパッタとレジスト膜を用いて面積比や空間配置等を変えて作製し、組合せ金属毎の中間生成物とH+の相互移動形態を解明し、連続反応の進行を明らかにする。 加えてナノスケールで組み合わせた電極に、それぞれ異なった表面修飾を施し連続反応の進行を調べ、組合せ金属毎の中間生成物とH+の相互移動および電解溶液中のイオン拡散の関係について明らかにする。 それらの結果を元に、電極材をナノスケールで、最適に組み合わせ配置した新規複合電極を創製して、そのCO2の電解還元特性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の電極試作が、年度初めにずれ込んだため、その分翌年の計上となった。実験としては順調に推移している。
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