研究課題/領域番号 |
21K05290
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
友原 啓介 九州大学, 基幹教育院, 助教 (40711677)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 天然物抽出物 / Ugi反応 / 天然物コネクティッド型分子 / 植物分子 |
研究実績の概要 |
2021年度は、天然物抽出物を基質とした多成分連結合成法を用いて、起源の異なる複数の天然有機分子が反応して同一分子に組み込まれた天然物コネクティッド型分子の一斉合成を達成することを目標に掲げた。本研究では、鍵反応としUgi4成分連結反応を選択した。すなわち、アルデヒド(またはケトン)、アミン、カルボン酸を含有する天然物抽出物の混合物に対して、求電子性と求核性を併せ持つイソシアニドを連結素子として添加して、これら4成分が反応して同一分子に組み込まれた天然物コネクティッド型Ugi付加体を一斉合成することとした。モデル基質を用いて反応条件を最適化したのち、Ugi反応の基質4要素のうち2つを天然物抽出物とした反応を試みた。すなわち、ガジュツ (Curcuma zedoaria) のメタノール抽出物をカルボニル源、トウゴマ (Ricinus communis) 由来の脂肪酸混合物をカルボン酸源として混合したものに対して、ベンジルアミンとシクロへキシルイソシアニドを添加したところ、C. zedoaria由来のcurcumenoneとR. communis由来のricinoleic acidが反応して連結した新規天然物コネクティッド型Ugi付加体を得ることができた。さらに本分子変換では、C. zedoaria由来のcurcumenoneとR. communis由来の二量化ricinoleic acid、linoleic acid、およびoleic acidがそれぞれ反応して連結した3種の新規天然物コネクティッド型Ugi付加体も同時に得ることができた。本結果は、天然物抽出物のケミカルエンジニアリングによって天然物連結型分子の一斉合成に成功した初の研究例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述の通り、夾雑物を含む天然物抽出物の混合物を基質としたUgi4成分連結反応により、起源の異なる複数の天然有機分子が反応して同一分子に結合した天然物コネクティッド型分子の初の一斉合成を達成した。また、得られた新規化合物の一部がプロテアーゼ阻害活性を有することも見出した。研究は、当初の計画通りに順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き多様な天然物抽出物を用いて天然物コネクティッド型分子の一斉合成を進め、創薬研究などに利用可能な天然物コネクティッド型分子ライブラリーの構築を目指す。また、古典的な天然物化学的研究手法では単離が難しい不安定成分や微量成分などの未開拓天然有機分子の直接的分子変換(利用)も目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は、2022年度の物品費として使用する計画である。
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