研究課題
世界規模で新規抗真菌薬の開発が必要とされている。このため本研究ではアスペルギルス・フミガタス およびカンジダ・アウリスに対する抗真菌活性を指標に菌寄生菌類をはじめとする微生物培養液を探索源としたスクリーニングを実施した。探索源の微生物は大村智記念研究所の糸状菌および放線菌からなる大村微生物資源ライブラリーを用いた。さらにカビに寄生する菌寄生菌類を日本各地から採取し、探索源とした。1次スクリーニングではアスペルギルス・フミガタスの薬剤感受性株に対して、2次スクリーニングではアスペルギルス・フミガタスおよびカンジダ・アウリスの薬剤感受性及び耐性菌に対して抗真菌活性を示すことを通過基準とした。微生物培養液7,325サンプルから24サンプルを見出した。スクリーニング通過サンプルについてはLC-MSを用いてfrequent hitとなる化合物が含まれるサンプルを除外した。その後、大量培養を行い、抗真菌活性を指標に活性物質の取得を試みた。シリカゲル、ODSおよびHPLCを用いて精製を行い、抗真菌活性物質14成分の取得に成功した。取得した化合物についてはNMRおよびMS解析により構造決定を行った。本年度は菌寄生菌2株から2種類の新規デカリン化合物を含む7化合物を構造決定した。現在は取得した化合物の構造活性相関の解明に取り組んでいる。成果については2022年度日本農芸化学会にて発表した。また、一つの株については論文投稿し、現在 in pressである。
2: おおむね順調に進展している
本申請では抗真菌活性を指標に菌寄生菌類をはじめとする微生物培養液から抗真菌薬リード化合を発見することを目的とし、(1) 微生物培養物からの抗真菌活性スクリーニング (10,000サンプル) 、(2) 抗真菌活性物質の発酵生産、単離・構造決定 (30化合物) 、(3) In vitro抗真菌活性スペクトル評価を行う計画である。初年度では(1)および(2)について中心に実施した。(1)についてはAspergillus fumigatus およびCandida aurisに対する抗真菌活性を指標に7,325サンプルのスクリーニングを完了し、 (2)については14化合物の単離、1つの新規化合物を含む8化合物の構造決定を行うことができた。3年間の初年度として順調に研究は進んでいると考えている。
申請時の計画通り引き続き(1) 微生物培養物からの抗真菌活性スクリーニング (10,000サンプル) 、(2) 抗真菌活性物質の発酵生産、単離・構造決定 (30化合物) 、(3) In vitro抗真菌活性スペクトル評価を行う。目標値は3年間で30化合物ではあるが、1、2年目でなるべく多くの化合物の取得、構造決定を行い、リード化合物を見出す。初年度に見出したスクリーニング通過サンプルから取得した化合物について構造決定を行う。新たに見出したスクリーニング通過サンプルからの抗真菌活性物質の取得を行う。
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