研究課題
アルツハイマー病の病態改善作用を持つペプチド因子ヒューマニンは、その遺伝子がミトコンドリアゲノムに存在するミトコンドリア由来ペプチド群の代表である。近年の研究で、ヒューマニンが筋細胞や膵臓B細胞など神経系以外の細胞にも作用があること、HNがミトコンドリアでのエネルギー産生促進作用を有すること、ヒトとげっ歯類の血液中のヒューマニン量は加齢とともに減少することがわかってきている。これらのことから、ヒューマニンと加齢に関連する疾患や老化そのものとの関連性が注目されている。本研究では、『抗老化因子』のひとつであるヒューマニンの役割を検証することを目的としている。初年度の検討として、マウスの体内でのヒューマニン量を正確に知るための測定系の構築を進めた。まず、マウスのヒューマニンに対する抗体を作製した。ヒューマニンのアミノ酸配列がヒトとマウスで異なることを利用し、マウスのヒューマニンを特異的に検出する抗体を得ることができた。複数の検出系で検討した結果、特異性については問題ないものの、定量的測定の際の感度についての改善が今後の課題であることがわかった。また、動物組織における生化学的評価を行う基礎的検討として、培養細胞の老化モデルを用いて、ミトコンドリア機能などの測定系の検証を行った。動物における検討では、老化モデルマウスを用いて、老化による運動能力や認知機能などの低下を行動試験で評価し、基礎的なデータを得た。さらに、これらのマウスの機能が高活性型ヒューマニンの投与によりどのような影響を受けるかについて検討した。
2: おおむね順調に進展している
マウスのヒューマニンの測定については、測定系の構築についての進展はあり、問題点についても明確になっている。動物を用いた検討についても、老化モデルマウスでの実験データを得ることができている。これらのことから全体的には概ね予定通りに進んでいると判断している。
マウスのヒューマニンの測定系については、問題点の解決のため、新たに抗体を作製することも含めて実験条件の検討を進める。動物を用いた実験については、老化モデルマウスでの評価を総合的に行うとともに、野生型マウスでの検討を進める予定である。
すべて 2022
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Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - General Subjects
巻: 1866 ページ: 130024~130024
10.1016/j.bbagen.2021.130024