研究課題/領域番号 |
21K05298
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
長谷川 輝明 東洋大学, 生命科学部, 教授 (90423566)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 糖鎖間相互作用 / ガン転移 / 受精卵 |
研究実績の概要 |
バクテリアセルロースから構成されたヒドロゲルであるナタデココに対する化学修飾を行い、LeX糖鎖やGM3糖鎖、さらにはGg3糖鎖を導入したナタデココ(それぞれNDC-LeX、NDC-GM3、およびNDC-Gg3と略)を合成した。元素分析によるN/C値や、化学構造選択的な各種染色剤を用いた染色試験により、これらの糖鎖を導入したナタデココが合成できていることを確認した。また、特定の糖鎖を認識するレクチンを用いるとこれらの糖修飾NDCが水中で会合することでも、これらの糖鎖がナタデココに導入できていることを確認した。水溶液中でNDC-LeX同士の会合試験を行い、Ca2+またはNa+の共存でNDC-LeX同士が会合することを確認した。また参照物質としてLeX糖鎖からFuc残基を削除した部分構造であるLacNAcを導入したNDC-LacNAc、Fuc残基に加えてGal残基も削除した部分構造であるGlcNAcを導入したNDC-GlcNAcなども合成し、これらの会合試験も行った。これらの参照実験により、LeX同士の会合にはFuc残基とGal残基の両者が必須であることを確認した。また、NDC-GM3とNDC-Gg3との間のヘテロな糖鎖間相互作用についても評価を行った。NDC-GM3とNDC-Gg3との間の相互作用はCa2+によって誘導されることを確認した。これに関する参照実験としては、GM3の部分構造であるLacおよびGlcを導入したNDC-LacおよびNDC-Glcを用いて、これらの糖修飾ナタデココとGg3との間の相互作用を評価し、GM3糖鎖の末端シアル酸や中間Gal残基がGg3との相互作用に重要であることを確認した。また、NDC-Gg3の代わりにNDC-LacまたはNDC-Galを用いた参照実験でも、Gg3糖鎖のGalNAcや中間Gal残基がGg3との相互作用に重要であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に研究計画書に記載した通り、2022年度までにLeX-LeX間相互作用の解明およびGM3-Gg3間相互作用の解明を行った。いずれの糖鎖間相互作用に関しても得られた成果を国内学会で複数発表しており、LeX-LeX間相互作用に関しては論文投稿も終えている(要修正で返却されたため現在対処中・2023年4月中旬時点)。GM3-Gg3間相互作用についても論文執筆は8割方終えており、投稿までに必要な残りのデータ(合成項に記載するべき詳細なスペクトルデータ)の取得を行っているところである。以上の点から研究の進捗状況は概ね順調と判断できる。ただ、コロナ禍およびロシアによるウクライナ侵攻に端を発した物価高により、各種試薬の納入価格が大幅に上昇しており、これが研究の進捗に影を落としていることは否定できない。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も申請時の研究計画書に記載した通りに実験を進める。具体的には様々な位置に硫酸機を導入したガラクトース(硫酸化ガラクトース)をナタデココに導入し、このナタデココ(NDC-GalSO3)とガラクトース修飾ナタデココ(NDC-Gal)との間の相互作用を評価する。この糖鎖間相互作用(GalSO3-Gal間相互作用)は、海綿中で作用しているとされるスルファチドとガラクトシルセラミドとの間の相互作用を裸眼スケールにて可視化させるものである。
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