研究課題/領域番号 |
21K05299
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
紙透 伸治 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (30553846)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 神経保護物質 / 活性窒素種 / 標的タンパク質 / 二次代謝産物 / 抗炎症物質 |
研究実績の概要 |
Pestalotioquinol A(pesA)は、真菌の二次代謝産物から見出された新規細胞保護物質である。神経細胞様に分化したPC12細胞にPesAを前処理することにより、活性窒素種であるペルオキシナイトライトに対して保護効果を示すことが明らかにされている。この化合物は抗炎症活性を示すことも明らかにされており、炎症性腸疾患(IBD)モデルマウスを用いた実験により、IBDを改善することが示唆されている。Pes Aの標的タンパク質を同定するために細胞サーマルシフトアッセイ行ったところ、Elongation factor 1 alpha 1 (EF1α1)が候補タンパク質として同定されている。EF1αはノックダウンすることによりAktのリン酸化が抑制され、アポトーシスが誘導されることが報告されている。また、ペルオキシナイトライトはAktのリン酸化を抑制し、アポトーシスが誘導されることが知られている。以上から、pesAはEF1α1を介してペルオキシナイトライトによるAktのリン酸化抑制を阻害することによりアポトーシスシグナル伝達を阻害し、細胞保護作用を示している可能性が考えられた。そこで、pesAがAktのリン酸化に影響を与えるかどうかを検討している。また、抗血小板剤であるシロスタゾールはEF1α1に作用し、PC12細胞の神経突起伸長を促進させることが報告されている(PLoS ONE 2011)。シロスタゾールがペルオキシナイトライトに対して保護効果を示すかどうかを調べたところ、pesAと同様に保護効果を示すことが明らかになった。以上の結果からEF1α1をpesAの有力な標的タンパク質候補として解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Pestalotioquinol AはIBDモデルマウスを用いた実験でも効果を示し、薬剤としての応用も期待できる化合物であることが明らかになった。また、有力な標的タンパク質としてEF1α1を見出しており、Pestalotioquinol Aの作用機序解析も概ね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Pestalotioquinol AがAktのリン酸化に影響を与えるかどうかの検討を進める。また、PC12細胞でEF1α1をノックダウンし、pestalotioquinol Aのペルオキシナイトライトに対する保護効果がどのように変化するかを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大による行動制限により実験を実施する時間が減ったため、消耗品費が予定額よりも下回ったために残額が生じた。これらの実験を実施することで使用する予定である。また、学会がオンライン開催となったため、残額として生じた旅費は次年度の学会発表旅費として使用する予定である。
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