研究課題/領域番号 |
21K05303
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村井 勇太 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (20707038)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スフィンゴミエリン合成酵素 / 光アフィニティーラベル / ノシル / スフィンゴ脂質 / ジアジリン |
研究実績の概要 |
本年度は独自のスフィンゴミエリン合成酵素2 (SMS2)選択的な阻害剤を搭載したノシルジアジリン型光アフィニティーラベル (NsPAL)プローブの作成を行なった。当初の計画通り、阻害剤のスフィンゴシン尾部末端にNsジアジリンを導入したものを構築し、NsPALプローブの阻害活性を確認したところ、SMS2選択性およびIC50値0.2uMを保持していることが確認できた。続いてこのNsPALプローブの光ラベル効率を検討するため、光照射によるジアジリン基の光分解を検討した。ジアジリン基の一般的な光分解波長は365nmであるが、本プローブでは分解効率が悪かった。そこで光波長を325-385nmのレンジで照射したところ、0℃、10分で完全に光分解を達成することに成功した。さらにNsPALプローブによる標的分子の光ラベル後は、Ns基特有の芳香族求核置換反応 (SNAr)を利用し、標的分子に検出タグ導入を考えていることから、SNAr条件についても検討を行なった。初め、検出タグとしてBodipy-SHを構築したが、脂溶性が高く生体分子への非特異的吸着が見られた。そこで親水性のPEG鎖をBodipyとチオール基の間に挿入することで、非特異的吸着を可能な限り抑制し、水溶性を保持したBodipy-PEG-SHを作成した。またSNAr反応は通常、有機溶媒中、加熱、塩基条件が必要とされるが、PAL法は水中で実施されるためSNArの効率的な条件を検討する必要があった。これまでの種々条件検討の結果、pH 9.0、 炭酸緩衝液中、70℃で反応が進む知見を得ていたが、副生成物による低収率がボトルネックであった。今回はさらに条件検討を行い、室温、超音波中で実施したところ効率良くSNArが進行することを見出すことにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的であったSMS2選択的な阻害剤を搭載したNsPALプローブの作成にとどまらず、次年度前半に実施する予定であった、PALプローブとしての有用性の確認、SNAr条件の最適化まで達成することができた。既に、PAL実験で使用するSMS2はFLAGタグやHisタグを導入したもので過剰発現を行い、PAL法に十分なタンパク量確保にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はNsPALプローブとSMS2を相互作用させ、1)光ラベル、2)SNAr、3)釣り上げタンパクの確認、解析を実施する。1)、2)の各ステップは本年度で確立した条件を用いて実施する。3)釣り上げタンパクのSDS-PAGE後、Bodipyのin gel蛍光によってSMS2釣り上げ有無の検証を行う。さらに蛍光標識されたバンドがSMS2であることを確証するため、FLAGやHisタグ検出抗体を用いて、蛍光バンドと重なっていることを確認する。 in gel蛍光でバンドが確認できない場合は、1)あるいは2)のステップがうまくいっていない可能性が示唆されるため、NsPALプローブやBodipy-PEG-SHの濃度を調節し、3)の検出が成功するよう条件検討を行い対処する予定である。BodipyによるSMS2の蛍光標識がうまくいった場合は、他の検出タグ(イオン増感剤など)に変更し、マルチなタグが導入可能かどうかについても検証を行い、本NsPALプローブの汎用性を高めたいと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額が生じたのは今年度の研究計画が予定通り遂行でき、無用な執行は行わず、次年度の研究に役立てようと考えたためであり、次年度の試薬代等に使用する予定である。
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