研究課題/領域番号 |
21K05304
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
友廣 岳則 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (70357581)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | photoaffinity labeling / diazirine / chemical probe |
研究実績の概要 |
本研究では、多機能を集積した独自の小型光反応基を用いて、生理活性リガンドのターゲットタンパク質同定効率を向上する。さらに従来法では困難であったリガンド結合ドメインにおける複数ラベル部位同定を達成し、それらラベルアミノ酸残基の位置情報にラベル量情報を加えることで、リガンド相互作用状態の微細な構造変化を追跡し評価し得る、光アフィニティーラベル法(PAL)の新たな構造解析法への展開を図る。この達成のために、ラベル後に蛍光基クマリンに変化する独自の発蛍光性光クロスリンカーを基盤技術として開発を進めた。初年度では、結合ポケットのラベル領域拡大を考慮して、光クロスリンカーを柔軟なアルキルジアジリン型に改良し、相互作用系に応じて種々の反応基を作製可能な合成ルートを確立した。これにより、光反応基ジアジリンの可動域が異なる複数の光クロスリンカーを調整することに成功した。さらに、このクロスリンカーを導入したリガンドプローブを作製したところ、PALによる結合タンパク質のラベル量は従来型クロスリンカーに比べて大きく向上することが分かった。一方、微小ラベルシグナルの更なる解析効率化を図るため、別途、生体直交性のクリック反応(銅触媒アジド-アルキン環化付加反応:CuAAC)を利用したポストラベルによる機能付与の検討を進めた。新たに開発した化合物を用いた反応系では、汎用CuAACに比較して、収率や反応速度の大幅な向上が見られた。種々の化合物を合成し、反応速度論的な検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
桂皮酸を基本骨格とする光クロスリンカーの合成ルートを見直し、光クロスリンカーユニットにおける光反応基ジアジリン基の位置を変更可能な汎用の高い合成ルートを確立した。これにより、多様な生体分子相互作用系解析に対応でき、さらに結合ドメイン内部/近傍における光反応基ジアジリン基の接触領域を調整可能な発蛍光性光クロスリンカー合成を可能にした。ジアジリン基導入のためのスペーサー長が異なる3種類の光クロスリンカーを合成した。さらにグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)を対象として、クロスリンカーを導入したリガンドプローブを作製し、PALによる相互作用タンパク質ラベルの検討を進めた。一方、プロテオーム系での極微量ラベル解析には濃縮が必須となるが、一般にビオチンーアビジン系が汎用される。プローブの親和性を妨げないように、クリック反応を利用したラベルタンパク質のポストビオチン化を進めるため、光クロスリンカーには小型アルキニル基を導入した。極微量系でのポストラベルには反応の効率化が要求される。新たなアジド基含有型銅配位子を作製したところ、汎用配位子であるTBTAの反応系に比較して収率や反応速度の大幅な向上が見られた。いくつかの配位子を合成し、最適条件をほぼ確立した。
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今後の研究の推進方策 |
GDHを用いた解析評価系ではラベル収率が大幅に向上し、さらに蛍光強度も向上した。しかし、LC-MS/MS解析によるラベル物質の予備的な解析では、その同定が複雑であった。この問題の原因としてアルキルジアジリンの光反応特性、つまり転移反応などの反応中間体カルベンの副反応などが考えられる。これに加えて、アルキン酸化反応などの可能性も考慮しながら種々の反応解析検討を行う。また、別途、それら副反応を抑えるための新たな反応基の開発も進める。一方、CuAAC開発では、解析効率向上が見られた系の誘導体作製により、その最適化を検討する。さらに、微量ラベルタンパク質解析の効率化に重要な濃縮、精製操作を効率化するための切断特性の導入を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地開催を予定していた参加学会(薬学会、年度末3月開催)がオンライン開催となった。分析用器具などの購入に使用する。
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