現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、当研究室では光架橋性ヌクレオシド2’-diazirine-conjugated adenosine(DA), 2’-diazirine-conjugated cytosine (DC)を開発している。DA, DCを導入したオリゴDNAと相補鎖核酸との架橋特性を評価した結果、ジアジリン残基が導入された核酸はDNAとのみ反応し、RNAとは反応しないことが明らかとなった。これらの知見は、DNA-RNA二重鎖に導入されたジアジリン部位が、DNA-RNA二重鎖に挿入されるのではなく、二重鎖の外部に位置することを示唆している。これらの知見をもとに我々は、DNA-RNA二重鎖に結合するタンパク質であるRNaseHを光架橋反応により捕捉し、相補鎖RNAを高い効率で加水分解することのできるDNA-RNaseH複合体の構築を目指して研究を行った。 DNA配列の様々な位置にジアジリン誘導体を導入したオリゴDNA(2C, 3A, 5A, 10A,11A)と、相補鎖RNAとの二重鎖を形成させた後、大腸菌由来RNase H、またはヒト由来RNase Hと光架橋反応を行い、生成したオリゴDNA-RNaseH複合体の相補鎖切断活性を評価した。その結果、3Aを用いた場合、大腸菌由来RNaseHと複合体を形成した際に、活性が約1.7倍に向上することを明らかとした。それに対して、ヒト由来RNaseHの場合では活性が約0.7倍に低下した。大腸菌由来RNaseHとヒト由来RNaseHの立体構造は非常に似ているが、アミノ酸配列は、50%の相同性しかないため、ジアジリン残基の反応性に差を生じたと考えられる。今後は、ジアジリン残基の導入位置を検討することで、より高い酵素活性をもつ複合体の探索を行う。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの結果を受け、今年度以降は、以下に示す研究(実施項目Ⅰ、実施項目Ⅱ)を推進する予定である。 実施項目Ⅰ:共有結合で架橋されたASO-RNaseH複合体の構築 標的RNAを、選択的かつ高効率に切断するASO-RNaseH複合体を、生体分子夾雑系で構築することを目指し、光応答性残基の導入されたASOの開発を行う。昨年度までの検討結果から、糖部2’位に光応答反応を誘起するジアジリン残基を導入した光応答性ASOが、活性の高いASO-RNaseH複合体の形成に有効であることが明らかとなっているため、今年度は、①光応答性残基が導入されたASOの最適配列の探索と、②光反応性残基の反応性の向上、の二項目を実施することでASO-RNaseH複合体の構築法を確立する。 実施項目Ⅱ:Antisense-Nuclease Capsulated Exosome(ANCsome)の構築 エクソソームを特定タンパク質のデリバリーに利用する際には、エクソソーム産生細胞と受容細胞の組み合わせが鍵となることが報告されている。とくに、がん組織へ選択的に薬剤をデリバリーする際には、樹状細胞や間葉系幹細胞からえられるエクソソームが有効であることが報告されている。また、特定のタンパク質をエクソソームに内包する技術として、膜結合性タンパク(CD63,lactadherin,Lamp2c等)と特定タンパク質の融合タンパクを利用する手法が報告されている。そこで本年度は、ASO-RNaseH複合体を含有するエクソソームの開発について検討する。
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