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2022 年度 実施状況報告書

自発老化細胞を用いた抗老化薬開発基盤の構築

研究課題

研究課題/領域番号 21K05308
研究機関神戸大学

研究代表者

岩崎 哲史  神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 助教 (40379483)

研究分担者 鎌田 真司  神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 教授 (20243214)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード細胞老化 / 巨大細胞 / SASP
研究実績の概要

本研究はメラノーマ細胞から自発的に形成される老化細胞(以下、自発老化細胞)を用いて、自発老化細胞の特性の解明(課題1)、老化細胞と周辺細胞との相互作用様式の解明(課題2)、抗老化薬の開発基盤の構築(課題3)の実施を目的とする。
課題1:種々の増殖因子や低分子阻害剤を用いた解析から、自発老化細胞を形成するメラノーマ細胞株では増殖シグナルが過剰に活性化されることが主因となり分裂過程に異常が生じたことが原因と考えられた。またタイムラプス解析により、通常サイズのメラノーマ細胞は高い頻度でアポトーシスを起こす一方で、自発老化細胞はアポトーシスが起こりにくいことが示された。以上の結果から増殖能が高く、生存が不安定なメラノーマ細胞は急速な細胞分裂により自発的に老化すること、自発老化細胞はアポトーシス耐性を獲得することが示された。
課題2:FACSを用いてソーティングした自発老化細胞を培養した際の培養上清をMCF7細胞に添加し、MCF7細胞のepitherial mesenchymal transition (EMT)関連遺伝子の発現変化を検証した。その結果、自発老化細胞はMCF7細胞に対してEMT関連遺伝子の発現上昇を促進することが分かった。また自発老化細胞の近傍のメラノーマ細胞ではEMTを促進する転写因子 signal transducer and activator of transcription 3 (STAT3) の活性化が認められた。以上の結果から、自発老化細胞は周辺の癌細胞にEMTを引き起こし浸潤や転移に寄与する可能性が高まった。
課題3:RNA-seq解析によって自発老化細胞で発現上昇が認められた遺伝子に焦点を絞り、自発老化細胞を殺傷するための分子標的になりうる分子を検索した。その結果9つの分子が選抜された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究目的として設定した3つの課題のうち、2022年度末時点において「課題1:自発老化細胞の特性の解明」はほぼ完了し、「課題2:老化細胞と周辺細胞との相互作用様式の解明」は80%程度、「課題3:抗老化薬の開発基盤の構築」は30%程度を進めることができた。概ねスケジュール通りに順調に進行していると考えている。

今後の研究の推進方策

2023年度も当初のスケジュール通りに研究を進める予定である。
「課題1:自発老化細胞の特性の解明」については、解析の過程で自発老化細胞の形成メカニズムに関わる新たな因子が見出されたため、当該年度はこの因子にも着目してより詳細な分子機構の解明を行なう。
「課題2:老化細胞と周辺細胞との相互作用様式の解明」はEMTを引き起こす具体的なシグナル伝達経路を特定するとともに、自発老化細胞による癌化促進機構を定量的に解析する。
「課題3:抗老化薬の開発基盤の構築」は標的候補をさらに絞り込む。さらに標的分子に作用する低分子化合物、中和抗体や抗体製剤などの適用可能性を評価し、自発老化細胞を特異的に殺傷する薬剤のプロトタイプを作成する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Integrin β1 transduces the signal for<scp>LY6D</scp>‐induced macropinocytosis and mediates senescence‐inducing stress‐evoked vacuole formation via<scp>FAK</scp>2022

    • 著者名/発表者名
      Nakagawa Keitaro、Nagano Taiki、Katasho Ryoko、Iwasaki Tetsushi、Kamada Shinji
    • 雑誌名

      FEBS Letters

      巻: 596 ページ: 2768~2780

    • DOI

      10.1002/1873-3468.14477

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Zinc promotes cell proliferation thorough Akt activation in benign melanoma2022

    • 著者名/発表者名
      Yuki Ichihara, Yuki Akamatsu, Yuya Mihara, Taiki Nagano, Norizo Saito, Hayato Tokumoto, Tetsushi Iwasaki, Shinji Kamada
    • 学会等名
      日本研究皮膚科学会 第47回年次学術大会
  • [学会発表] Phorbol ester TPA inhibits the proliferation of metastatic melanoma via tyrosine phosphatases, TC-PTP and SH-PTP22022

    • 著者名/発表者名
      Yuki Akamatsu, Mami Onishi, Yuki Ichihara, Miwa Yamauchi, Taiki Nagano, Masahiro Oka, Shinji Kamada, Tetsushi Iwasaki
    • 学会等名
      日本研究皮膚科学会 第47回年次学術大会
  • [学会発表] 老化細胞における空胞形成に及ぼすLY6Dのタンパク質構造2022

    • 著者名/発表者名
      森澤 研允, 長野 太輝, 岩崎 哲史, 鎌田 真司
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会
  • [学会発表] Nectin-4は老化細胞の細胞面積増大を引き起こすことで細胞の生存を促進する2022

    • 著者名/発表者名
      片所 諒子, 長野 太輝, 岩崎 哲史, 鎌田 真司
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会
  • [学会発表] 倉橋 健介,藤村 花凜,片山 魁人,山中 柊人,岩崎 哲史,吉原 静恵,徳本 勇人2022

    • 著者名/発表者名
      酸化亜鉛ナノ粒子を褐虫藻が亜鉛源として利用する際の吸収機構の解析
    • 学会等名
      日本植物学会第86回大会
  • [学会発表] Induction of DNA damage by exosome derived from senescent cells2022

    • 著者名/発表者名
      Yukihiro IKEGAKI, Taiki NAGANO, Tetsushi IWASAKI, Kenji MIYADO, Shinji KAMADA
    • 学会等名
      第45回日本基礎老化学会
  • [学会発表] Riboflavin suppresses cellular senescence through LSD1-mediated downregulation of Sirtuin-42022

    • 著者名/発表者名
      Taichi OSUMI, Taiki NAGANO, Tetsushi IWASAKI, Shinji KAMADA
    • 学会等名
      第45回日本基礎老化学会

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公開日: 2023-12-25  

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