研究課題/領域番号 |
21K05309
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
坂本 隆 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (80423078)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 4重鎖核酸 / 細胞内蛍光イメージング / 蛍光プローブ |
研究実績の概要 |
4重鎖(G4)に代表される核酸の非標準構造は、遺伝子発現制御や疾患への関与が指摘され、その機能解明が求められている。G4の細胞内蛍光イメージングはこれに大きく貢献すると期待されるが、最も重要な「蛍光プローブ」の開発は道半ばである。本研究では独自開発した蛍光色素QCy(MeBT)3について、「(A)その蛍光特性の詳細と細胞内4重鎖(G4)核酸イメージング能力」および「(B)QCy(MeBT)3の効率的な誘導化法と、より高性能なG4核酸プローブの化学構造」を明らかにすることを目的とした。 令和3年度は(A)について重点的に進め、以下の5点を明らかにすることで、QCy(MeBT)3が優れた細胞内G4核酸イメージングプローブであることを証明した。(1)QCy(MeBT)3は様々なG4 核酸と結合した場合700 nmの蛍光強度(570 nm励起時)が約90倍、2重鎖(ds)DNAと結合した場合600 nmの蛍光強度(470 nm励起時)が約30倍増加する。(2)蛍光量子収率は0.002~0.003程度でそれほど高くない。(3)QCy(MeBT)3とG4 DNAあるいはdsDNAとの相互作用は比較的強い(解離定数100 nM程度)。(4)QCy(MeBT)3はG4 DNAにエンドスタッキングし安定化する。(5)QCy(MeBT)3により、細胞内のG4核酸とdsDNAを同時多色染色できる。 以上の研究成果について、日本ケミカルバイオロジー学会第15回年会などの国内学会(5件)、国際学会(ISNAC2021)(1件)での報告、および招待講演(2件)を行なった。また、これらの成果をまとめた論文(Analytical Chemistry, 94(10), 4269-4276 (2022))がSupplementary Coverに採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の2つの目的(「QCy(MeBT)3の蛍光特性の詳細と細胞内4重鎖(G4)核酸イメージング能力の評価」「QCy(MeBT)3の効率的な誘導化法と、より高性能なG4核酸プローブの化学構造の解明」)のうち、QCy(MeBT)3の機能評価をすでに終えていること、また、これらの成果を学会発表や投稿論文として報告済みであることから、「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的(A)については、令和3年度でほぼ終了したことから、令和4年度以降は研究目的(B)について、重点的に研究を進める。具体的には以下の4つの観点から研究を進める。 (1)QCy(MeBT)3への官能基導入方法の探索(2)QCy(MeBT)3の効率的な誘導体化法の探索(3)QCy(MeBT)3誘導体化合物ライブラリの構築(4)構築したQCy(MeBT)3誘導体化合物ライブラリからの高性能G4プローブのスクリーニング 以上から、より高性能なG4イメージング蛍光プローブの化学構造を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は新型コロナ感染症の影響により大学の閉鎖等が行われたため、研究に従事する学生の研究時間に一定の制限がかかった。これにより、蛍光色素合成などに使用する試薬等の消耗品の購入にかかる費用が当初計画よりも縮減した。また、学会等への参加のための旅費を計上していたが、全ての学会がオンライン開催となったため、これも当初計画よりも縮減した。 令和4年度は「QCy(MeBT)3誘導体化合物ライブラリの構築」など、蛍光色素合成を精力的に行うことを計画している。繰り越した経費は、当初経費と合わせてこれに使用する試薬等の消耗品の購入に使用する。また、学会参加のための旅費として使用することを計画している。
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