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2022 年度 実施状況報告書

δ-セレノリシンとセレノエステルの選択的縮合反応を利用した修飾タンパク質合成法

研究課題

研究課題/領域番号 21K05311
研究機関高知大学

研究代表者

和泉 雅之  高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (80332641)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードタンパク質化学合成 / 化学選択的縮合反応 / セレン / ユビキチン / 環状セレノエステル
研究実績の概要

タンパク質のユビキチン修飾は、不要タンパク質の分解、DNA修復、炎症、アポトーシスなど多彩な生命現象に関わっており、がんや神経変性疾患の原因ともなることからユビキチン化の機能解明が求められている。そのため、プローブとなるユビキチン修飾タンパク質の合成法が盛んに研究されている。タンパク質には反応点となるカルボキシ基とアミノ基が多数存在するため、プローブを短工程で効率的に合成するためには選択的縮合反応の開発が必要である。我々は、化学選択的なユビキチン化反応として、Brikらが開発したδ-メルカプトリシンを介したイソペプチドケミカルライゲーション法を応用し、δ-メルカプトリシンの硫黄原子をセレン原子に置換したδ-セレノリシンを介したユビキチン-チオエステルとの連結反応であるセレノイソペプチドケミカルライゲーション法を開発した。本研究ではその連結反応を発展させ、δ-セレノリシンとユビキチン-セレノエステルを利用する、セレン同士の化学選択的縮合反応を開発している。昨年度は、Boc固相合成法で利用するδ-セレノリシン誘導体の合成法と、環状ユビキチンセレノエステルの合成に必要なC末端活性化ユビキチンの効率的な合成法を確立した。本年度は、側鎖保護基の異なるδ-メルカプトリシン誘導体の合成法の検討と、セレン同士の化学選択的縮合反応のモデル反応として、環状ペプチドセレノエステルの合成法の検討および環状ペプチドセレノエステルとN末端にセレノシステインを持つペプチドとの連結反応を検討した。そして、ペプチドヒドラジドから環状ペプチドセレノエステルへの変換反応の条件を確立した。さらに、N末端にセレノシステインを持つペプチドとの連結反応を検討して課題の洗い出しを行った。以上の研究成果について2件の学会発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、不要タンパク質の分解など多彩な生命現象に関わっているタンパク質のユビキチン化の機能解明のためのプローブとなるユビキチン修飾タンパク質の効率的な合成法の開発である。タンパク質には反応点となるカルボキシ基とアミノ基が多数存在するため、プローブの短工程で効率的な合成には選択的縮合反応の開発が必要である。我々は、セレンの高い反応性に着目し、Brikらの報告しているδ-メルカプトリシンの硫黄原子をセレン原子に置換したδ-セレノリシンを介したユビキチン-チオエステルとの連結反応を新たに開発した。本研究ではその反応を発展させ、環状ユビキチンセレノエステルを利用することで、δ-セレノリシンを導入したタンパク質とのセレン同士の化学選択的縮合反応を開発している。設定した3つの課題の進行状況:課題1では、Boc基で保護されたδ-セレノリシン誘導体の合成法を確立し、BocまたはFmoc固相合成法のどちらを用いてもδ-セレノリシン含有糖タンパク質の合成ができるようになった。課題2では、環状ユビキチンセレノエステルの合成を行うため、超音波ペプチド固相合成法を用いて長鎖ペプチドを効率的に合成することで、2セグメント戦略によるユビキチン-α-ヒドラジドの合成法を確立した。また、ペプチド鎖中にセレノシステイン残基を有するペプチド-α-ヒドラジドから環状ペプチドセレノエステルへと変換する反応条件を見出した。課題3では、セレン同士の化学選択的縮合反応のモデル反応として、環状ペプチドセレノエステルとN末端にセレノシステインを有するペプチドの連結反応を検討し、反応は進行するものの反応効率を上げるために添加剤等の反応条件の検討が必要であることがわかった。本研究の鍵となるセレン同士の化学選択的縮合反応のモデル反応の進行が確認できたことから、進捗状況をおおむね順調と自己評価した。

今後の研究の推進方策

我々は、セレンの高い反応性に着目し、Brikらの報告しているδ-メルカプトリシンの硫黄原子をセレン原子に置換したδ-セレノリシンを介したユビキチン-α-チオエステルとの連結反応を新たに開発した。本研究では、この連結反応を発展させてより効率的なユビキチン修飾タンパク質の合成法とするため、環状ユビキチンセレノエステルとδ-セレノリシンを導入したタンパク質とのセレン同士の親和性を利用した化学選択的縮合反応の開発を進めている。現在の進捗状況は、設定した3つの課題のうち、課題1では、Boc基で保護されたδ-セレノリシン誘導体の合成法を確立し、Boc固相合成法、Fmoc固相合成法どちらを用いてもδ-セレノリシン含有糖タンパク質を合成できるようになった。課題2では、超音波固相合成法によるユビキチン-α-ヒドラジドの2セグメント戦略による迅速な合成法を確立した。また、セレノシステイン残基を有するペプチド-α-ヒドラジドから環状ペプチドセレノエステルへの変換法を見出した。今後は、これらの知見をもとに、セレノシステインを介した連結法を利用してセレノシステイン含有ユビキチン-α-ヒドラジドを合成し、環状ユビキチンセレノエステルへの変換を検討する。課題3では、モデルペプチドの環状セレノエステルとN末端にセレノシステインを有するペプチドとの連結反応が、2つのペプチドを緩衝液中で混合するだけで進行することを見出した。しかし、反応は完全には進行しなかったため、今後は添加剤を加えるなどの条件検討を行う。そして、76残基の長鎖の環状ユビキチンセレノエステルとδ-セレノリシンを導入したタンパク質との化学選択的縮合反応の開発へとつなげていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年度は研究の最先端に注力したのでおおむね順調に進行しているが、研究に携わっている学生の体調不良などの突発事項があり、比較的小スケールでの実験が主となって実験に使用した試薬の量などが予定よりも少なかった。また、学会発表の参加人数も少なく旅費の使用も少なかったことから未使用額が生じた。次年度は最終年度なので、研究を完成させるため合成スケールを拡大するため、必要な試薬量の増加や分取用HPLCカラムの購入などが予定されている。また、成果を論文発表するための費用や、アフターコロナで再開された対面での学会での成果発表と情報収集・交換を積極的に行うために旅費にも利用する。本年度は幸い質量分析装置やHPLCの故障もなく順調に研究が進行したが、次年度以降の予定外の修理費などにも対応できるように有効利用していきたい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] セレノシステインを含むレクチンPhoSL誘導体の合成研究2023

    • 著者名/発表者名
      和泉雅之
    • 学会等名
      日本化学会第103春季年会
  • [学会発表] 側鎖にオルソゴナルな保護基を有するδ-メルカプトリシン誘導体の合成2022

    • 著者名/発表者名
      田村優伍、和泉雅之
    • 学会等名
      2022日本化学会中国四国支部大会

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公開日: 2023-12-25  

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