研究課題
RNA内のグアニン塩基に富んだ配列で形成されるグアニン四重鎖構造(rG4)は生物学的に重要な役割を担っていることが明らかとなってきており、最近では疾患の治療標的としても期待されている。従って、rG4の詳細な構造解析はその機能を理解する上で重要な情報を提供する。しかしながら、生体内においてrG4による生物学的な制御機構が存在しているのではないかと考えられるものの、特異的に検出する解析手法が無く未解明な点が多い。本年度では、RNAグアニン四重鎖構造(rG4)をヌクレオチドレベルの分解能で検出可能な技術を開発するためにCe(IV)/EDTAを用いてrG4内のループ部位にあたる一本鎖RNAを標的とすることができるかを検討した。その結果、Ce(IV)/EDTAがrG4内の所定の一本鎖RNAのみを切断可能であることを見いだした。また、切断活性が最大となる条件を決定し、Ce(IV)/EDTAの作用機序をNMRおよび反応速度の物理化学的データの取得により解析も行った。種々の検討から、四重鎖構造内のループ部位の一本鎖RNAは単純な一本鎖RNAとは異なる特殊な環境にあることが予想されたが、その詳細に関しては現在解析中である。さらに四重鎖に特異的な切断かどうかを評価するためRNA配列中のrGを四重鎖形成能に乏しい7-デアザグアノシンに置換した合成オリゴを用いると、切断活性が著しく低下したことから、四重鎖形成に依存した切断であることも明らかとなった。こうして本研究の中核を成す構造解析法を確立した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通りに本研究の基盤となるrG4構造解析法の構築ができたため。
次年度では、現在まで報告がなされているrG4構造すべてにおいて本技術を応用し、その汎用性を実証する。テロメアRNA配列や神経変性疾患におけるリピート配列、mRNAおよび5’UTRにおける配列で形成されるrG4構造が該当する。また、rG4構造に加え、ヘアピンやバルジ、インターナルループ構造が共存した長鎖RNA配列においても検討し、rG4構造選択性を検証する。
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Histochemistry and Cell Biology
巻: 157 ページ: 359-369
10.1007/s00418-022-02074-4