研究実績の概要 |
本研究では,血管新生因子であるチミジンホスホリラーゼ(TP)の酵素活性に応じて蛍光応答する分子の開発を行った。 チミジンホスホリラーゼの基質特異性の調査を行い,プリン塩基の類似体であるベンゾイミダゾールがヌクレオシドの塩基部位に導入できる事を明らかにした(デオキシ体:96%,リボ体:23%)。2-メチルベンゾイミダゾール,2,3-ジメチルベンゾイミダゾール,2,3-ジクロロベンゾイミダゾールともに,デオキシ体99%,リボ体99%の反応転換率を示し,非天然ヌクレオシドが得られることがわかった。2-カルボキシベンゾイミダゾールは,反応速度は速いものの,転換率は低い事が分かった(デオキシ体:69%,リボ体5.5%)。チミジンホスホリラーゼとベンゾイミダゾールの構造活性を調査したところ,五員環イミダゾール部位が重要である事が分かった。 そこで,イミダゾール骨格を有し,蛍光色素になる化合物の合成を有機化学的に行った。1,2-ナフトイミダゾール(ex=240nm,em=344nm),ピレノイミダゾール(ex=341nm,em=400nm),イミダゾフェナジン(ex=380nm,em=530nm),ペリミジンを合成した。これらのベンゾイミダゾール類似体をチミジンホスホリラーゼにてヌクレオシドの塩基部位に導入する事を試みた。蛍光性ベンゾイミダゾール類5mM,リボースドナーとしてチミジンもしくはウリジンを40mM,チミジンホスホリラーゼ5units/mLを1mMリン酸緩衝液(10から30 % DMSO)に入れて40℃に保ち反応を行った。1,2-ナフトイミダゾールはヌクレオシドの塩基部位に導入する事ができ,デオキシ体で99%,リボ体で68%になり,イミダゾフェナジンではデオキシ体で31%,リボ体で9.1%の転換率であった。ピレノイミダゾールとペリミジンは反応が進行しない事が分かった。
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