研究課題/領域番号 |
21K05321
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
丹羽 一樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (30443211)
|
研究分担者 |
山崎 太一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (00462838)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 生物発光 / 量子収率 / qNMR / 分光放射計測 |
研究実績の概要 |
発光反応溶液中の発光基質分子数を随時定量するため、発光反応基質としてホタルルシフェリンの定量に関する特性評価を行った。具体的には、吸湿性試験として基質中の水分量を熱重量測定装置(TG)により測定し、高純度試薬が吸湿により約0.7%重量変動を示すことが明らかとなった。尚、吸湿性試験前後においてルシフェリン量の変化はNMRスペクトル上確認できなかった。以上により量子収率測定を行う際、事前の加熱処理による吸湿水分量を制御することや、実験室内の湿度条件による補正により、基質定量精度を向上させる方法が確立できた。 次に、定量NMRによりルシフェリンの純度を測定した。その結果高純度試薬のルシフェリンの重量%濃度は0.928±0.08 kg/kg(2σ)であり、約7%の不純物(吸湿による水分を含む)を含むことが明らかとなった。この結果はこれまでの量子収率を7%ほど上方修正させる必要があることを強く示唆している。また、水溶液中において15時間以上の安定性があることを定量NMRにより確認できた。 また、量子収率測定の対象となる発光反応系について、発光反応条件の最適化に向けた評価実験を行った。具体的には、酵素発光反応の発光量を変化させることが知られている添加剤(CoA、チオールなど発光促進物質および長鎖脂肪酸等発光阻害物質)の効果評価をモデル系として、量子収率測定を実施した。その結果、基本的に添加剤の影響はなく、従来の定量方式での測定結果と再現性のある約40%という結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験室の空調故障により室温が35℃を超え、機器の故障などが発生し、作業の停止を余儀なくされた。またコロナ感染症対策として出勤停止措置も加わり、作業時間が大幅に制限された。そのため、発光反応の評価およびHPLCによる基質の評価を行うことができなかった。 また、上記の理由により、当所計画において検討してたセレテラジンの優先順位を下げ、ホタルルシフェリンでの評価を実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度において重量%濃度の評価を行ったが、ホタルルシフェリンは光学異性体があり、このものは発光基質とはならない。そのため、光学純度については、キラルカラムを用いたHPLCで評価する必要がある。今後はこの光学純度の評価を含めて、HPLCによるルシフェリンの測定実験を行い、発光反応により基質消費の定量分析を実施しる。 また、これまでは吸光度により基質ルシフェリンの濃度を測定していた。しかし、水溶液のpH、気温、湿度などにより、吸光度の測定結果が影響を受ける。特に吸光係数はpH の影響を受けやすい。今回明らかとなった吸湿性などをも考慮に入れた吸光係数の再評価を行い、吸光度法によるルシフェリン定量の妥当性確認も含めて、基質定量の精密化を行う。 更に、セレテラジンあるいはそのアナログの定量評価についても可能な限り試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験室の空調故障により室温が35℃を超え、機器の故障などが発生し、作業の停止を余儀なくされた。またコロナ感染症対策として出勤停止措置も加わり、作業時間が大幅に制限された。そのため、発光反応の評価およびHPLCによる基質の評価に関する実験を行うことができず、消耗品等物品購入が大幅に減少し、次年度使用額が発生した。 次年度は、計画が遅滞していたHPLCにによる基質評価を行うため、これ必要な物品等購入を行う計画である。
|