ホタルなど生物発光反応の量子収率(Quantum Yield、QY)は、発光反応の光生成効率を示す指標であり、1分子の発光反応基質が光量子を1つ生成する確率と定義される。QYを実験的に測定するためには、発光光子数を定量する必要がある他、反応分子数を厳密に定量する必要がある。 従来の基質定量の方法では、基質分子数をナノモル程度まで少なくし、数分で基質が完全に消費されるように、反応条件を設定していた。この方法では反応分子数の定量操作はQY測定の前段階の試薬調製の段階で完了するため、比較的簡便に完了する。一方で基質調整段階での純度評価が厳密である必要があるが、これまでは吸光係数εの文献値を用いた吸光度法による定量しか行われてこなかった。また、QY測定時には基質分子数を少なくしているため生成光量子数が少なく、高感度の検出系が必要となる。このことは、発光量が少ない、暗い反応系では光測定が行うことができない、という側面にもつながっている。 発光光子数の定量についても、高感度な分光測定が必要であり、その正確性を厳密に精査する必要がある。 本研究では、基質分子数と光量子数の双方の定量精度を、産総研の計量標準研究部門の有する国家計量標準の開発・供給の知見で再検討した。特に、吸湿性の評価による影響、更には定量NMR法による純度評価を行い、基質溶液調整における分子数定量の不確かさ要因を精査した。 以上、基質分子数および生成光量子数定量技術を基盤に、ホタル発光反応などのQYの測定実験を行った。更に、基質濃度が比較的高く、反応が長時間継続するような条件で、基質残量をHPLCでモニタしながら生成光子数を定量するシステムを構築中である。今後、これまでQYの評価が困難であった暗い発光反応系の測定評価を行っていく予定である。
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